米エネルギー省は5月17日、日本に対する天然ガスの輸出を許可すると発表した。テキサス州にあるフリーポート社の液化天然ガス施設から1日あたり14億立方フィートの天然ガスを20年間日本に輸出できるようになる(最終認可には米エネルギー規制委員会の許可が必要)。
米国はシェールガス革命によって、世界最大の石油輸入国から石油産出国に変わろうとしている。だが豊富に採掘できる石油や天然ガスを輸出すべきかどうか、米国内では激しい議論が行われてきた。
米国は現在、原油や天然ガスの輸出に制限を儲けている。石油業界や金融業界では、今後余った石油や天然ガスを各国に輸出することで、米国の経常収支を劇的に改善できる主張してきた。
一方、石油を利用する側の産業界では、別な主張を行っている。余った石油を国内にとどめておけば、国内のエネルギー価格が大幅に低下し、米国の製造業が他国に比べて圧倒的に有利になると指摘。製造業強化の方が米国にとって国益になるとしていた(本誌記事「オバマ大統領が2020年までに米国は天然ガスの純輸出国になるとの見通しを明らかに」参照)。
日本は震災以降、エネルギー輸入が増加し、最近の円安も加わって貿易赤字が急速に拡大している。米国から安価な天然ガスを輸入できれば、日本にとってのメリットは極めて大きい。日本政府は米国政府に対して、日本に対する輸出を許可するよう要請を行っていた。
今回、エネルギー省が輸出の許可に踏み切ったことで、米国はエネルギー輸出に大きく舵を切ることになる。このことは、日本経済のみならず世界にとって大きなインパクトをもたらすことになる。
米国が石油の輸出国になることで、米国の経常収支の改善が期待される。これまでの米国は恒常的な輸入依存体制で経常赤字が定着、これによってドルは40年近く下落を続けてきた。石油の輸出によってこの流れが逆転し長期的なドル高に転換する可能性が高くなってきた。ドル高転換が実現すると、これまで上昇が続いてきた金価格が長期的な下落に転じる可能性もある。
日本にとっては、日露交渉の進展という思わぬ効果も期待できる。4月に行われた安倍首相のロシア訪問によって本格的な日露交渉がスタートした(本誌記事「安倍首相とプーチン大統領の会談は大成功。影の立役者は森元首相」参照)。背景にはロシア側の譲歩があるといわれているが、そのきっかけのひとつとなったのが、米国による安価な天然ガス輸出である。
これまでロシア側は、豊富な天然ガスを武器に強気の交渉姿勢に出ると見られていた。だが米国による輸出の可能性が高まったことで状況が一変した。日本はロシアに天然ガスを頭を下げて売ってもらう必要がなくなった。今回の決定によって、日露交渉はさらに有利に進めることができるだろう。
また国際政治の分野においても中東の重要度の低下など大きな影響が出てくる可能性が高い。石油という基幹エネルギーの勢力変化は、大国間のパワーバランスを大きく変えるきかっけになるかもしれない。
【参考記事】
オバマ大統領が2020年までに米国は天然ガスの純輸出国になるとの見通しを明らかに
筆者考:
【米国が天然ガスの日本輸出を許可!】・・・さり気なく、余り話題に成らぬニュースですが、これは今後の世界の経済だけではなく政治的に大きなインパクト齎す物といえる。
先ず、資源大国(特に石油、天然ガス)のロシアが米国が日本輸出に許可した事で焦燥感を抱く事が想定される。即ち、日本国へのエネルギー供給国が増え!・・・東シナ海有事の際にエネルギー供給が中東から止まっても米国からの輸入で凌げる事、加えてロシアが米国の天然ガスの輸出許可で日本国を取り込み現在以上に日本国を操れる事を懸念する事は必至で、連れて北方領土問題で譲歩してくる可能性が出てきました。
勿論、これは筆者の希望的観測ですが、可能性を否定できない!と思います。
米国の天然ガス日本輸出許可は朗報だが!・・・穿った観点から俯瞰すると、「経済の動脈!」と言えるエネルギーの米国依存度が大幅に高くなり、それでなくとも米国が日本国に手枷足枷を嵌めて自由な動きが制限されている現状が、さらに自由度が失われる恐れを否定する事は出来ぬ。
まぁ!~、輸出許可が下りたといっても、此れが日本国に有利に作用するか?は価格設定によるでしょう。尤も初めは甘い人参(低価格)で鼻面を掴まれ轡(くつわ)噛まされ、さら馬勒(ばろく)を装着され、後は米国の思い通りの道を走らされる姿が想像できるが。
安倍政権下で日本国近海に眠るエネルギー資源のメタンハイドレードの採掘技術が開発されて、一日も早く商業ベースの乗ることが促進される事を期待しているが!・・・果たして何年かかるのか?は神のみぞ知るでしょう。
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