2014年5月15日木曜日

戦争の功罪について、米国で大論争

「アメリカのイマを読む」

戦争の功罪について、米国で大論争

「米国は戦争が大好き」と説く論客も

戦争は人間にとって利益になるのか?
 あまりにも大上段に振りかぶった質問である。今回、なぜ、この疑問を投げたのかというところから話を始めたいと思う。
 米国で4月、『War! What Is It Good For?(仮訳:戦争! 恩恵はいったい何なのか)』というタイトルの本が出版された。この直後から米国のさまざまな場で、識者たちが戦争の功罪について議論を始めている。
 著者はスタンフォード大学歴史学部のイアン・モリス教授。2011年に『人類5万年 文明の興亡(上・下):なぜ西洋が世界を支配しているのか』という、こちらもまた大胆なテーマの書籍を世に出している。日本では今年3月に同書の訳書が出版されたばかりだ。
 そして今回のテーマが戦争である。最初に述べておくと、モリス教授が説くのは「戦争の肯定」である。戦争という行為は、多くの場合、人間を殺傷することだ。それをなぜ肯定できるのかという疑問がすぐにわく。
 同教授は過去1万年の歴史を眺めた時、戦争を繰り返してきたことで、人間はより平和でより富んだ社会を築くことができていると逆説的に説く。人間の歴史は言い換えれば戦争の歴史で、今でも地域紛争が地球上で続いている。だが、戦争をしてきたからこそ、今の比較的平和な社会が実現できていると解釈する。
 戦争は「野蛮である」とも書くが、人間は経験を積み重ねることで社会を組織化し、より安定化させて経済成長を達成してきたという。500ページ超の書籍を要約すると、大凡はこうした内容だ。
 同教授は同書を出版した後の4月末、米ワシントンポスト紙に自著についてのコラムを書いている。その中で、「戦争は人間を金持ちにしたばかりか、社会を安全にした」と記している。
 読者の中にはこのフレーズにカチンときた人がいるだろう。戦争で家族や親族、友人・知人をなくしたり、辛い経験をしてきたりした人にとって、戦争を肯定する発言は心を逆撫でするものであろう。考えてみれば当たり前である。自ら望んで戦場での死を選ぶ人はいない。無念な戦死がほとんどだ。一方、納得した人もいるにちがいない。それゆえ、賛否を論ずる議論がさかんに行われている。
1万年前は人口の10~20%が戦闘で死亡した
同教授の主張をもう少し紹介しよう。同教授は考古学者でもあることから、1万年前と現代を比較している点が興味深い。その間、戦争と平和、そして人間の力の関係が少しずつ変化してきて、現在は当時よりも平和であると論じる。
 1万年前は部族間の戦闘や抗争が今よりも頻発し、人口の10~20%は戦闘で死亡したと推測している。それが20世紀に入ると、2つの世界大戦があったにもかかわらず、戦争による死亡者は人口の1~2%にまで減った。さらに21世紀になると、国連統計によれば、戦争や紛争によって命を落とす割合は人口の0.7%にまで落ち着いたという。そして「今の時代に生まれてなんと幸せなことか」と述べる。
 さらに、戦争が経済的な国家繁栄につながった歴史があると説く。大英帝国やパックス・アメリカーナ(米国の平和)の時代をその象徴として捉えている。
 戦争によって利益を得る人たちがいるという考えは、一般的にも、広く信じられている。米国では第2次世界大戦に突入したことで、大恐慌以来低迷していた景気が回復したと言われている。実際に米国のGDP(国内総生産)は、真珠湾攻撃があった41年には恐慌前の水準に戻っている。
 陰謀論を持ち出さなくとも、戦争が景気回復の起爆剤になるとの考え方は広く信じられている。日本でも朝鮮戦争やベトナム戦争の特需で、特定の産業が恩恵に浴したのはまぎれもない事実である。
 個人的な話になるが、筆者の父は終戦直後から定年まで繊維会社に勤務していたため、朝鮮特需について何度も聞かされた。食糧や合材の調達といった分野もそうだったが、繊維業界は特に「ガチャマン景気」と呼ばれる活況を呈した。織機をガチャンとやると万の金が入るという意味だ。軍服や毛布、テントなどの繊維製品を日本が大量受注した。50~52年だけで約10億ドルの直接受注があったという。当時の為替レートで3600億円である。
 こうした点を考慮すると、戦場の悲惨さが歴然としてある一方で、利益を得た人たちも確実におり、モリス教授の「戦争は利益になる」という主張には説得力がある。
多くの経済学者が「戦争による景気拡大は幻想」と説く
しかしながら、近年になって、この議論に異論が出ている。
 ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ氏は英ガーディアン紙のコラムで次のように書いている。「戦争は経済的な繁栄と密接な関連性があると論じられます。資本主義には戦争が必要と言われることさえあります。しかしこれは、最近ではもうナンセンスな議論です。91年の湾岸戦争でも、経済への悪影響の方が大きかった。経済成長は平和時にこそ達成されるというのが通説になっています」。
 戦争によって需要が生まれるのは事実だが、近年の戦争はコストがかかりすぎて国家財政にとってマイナスとの見方がある。ハーバード大学ケネディ行政大学院が昨年まとめた報告書には、アフガニスタンとイラクの両戦争で、米政府は最終的に4兆~6兆ドル(約400兆~600兆円)もの支出を余儀なくされると記されている。しかも両国に派遣された総計20万と言われる米兵たちは、派兵されていなければ米国内で雇用され、経済活動に貢献していたはずである。
 経済学者ジェームズ・ガルブレイス氏(ジョン・ケネス・ガルブレイスの息子)も戦争悲観論者だ。「過去100年間だけを見ても、すべての戦争は程度の差こそあれ、インフレをもたらしています。戦争になると物価や賃金が上昇する一方、購買力が下がってインフレが加速されます。その中で富裕層はさらに裕福になり、労働者の貯蓄は減るという悪循環が生まれています」。
 今では多くの経済学者が戦争による景気拡大は幻想で、むしろ悪化するという立場だ。ただノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は戦争による経済効果をプラスに捉えており、モリス教授の側に立つ。
「米国は戦争が大好き」
日本国内に目を向けると、いざとなったら中国を含む隣国との戦争も厭わないという風潮が一部で見られるが、大多数の市民は戦争など百害あって一利なしとの考えかと思う。それは第2次世界大戦で敗戦国となった時の教訓が大きいからだろう。人命の損失や国土の荒廃は計り知れず、2度と戦争をすべきではないとの思いは日本人の共通項になっているはずだ。戦争という殺戮の場で、無辜の市民が命を落とす状況を作ってはならない。こうした思いが経済的利益を求める思いよりも大きいのが日本人のいまのメンタリティーではないか。
 功利性を超えて、理念的に戦争を肯定する人は米国でも少数派である。ただ保守派の中には「戦争が好き」という人がいる。筆者が2003年に首都ワシントンで取材していた時、共和党保守派の学者からこの言葉を聞いた。
 保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)のマイケル・レディーン元研究員は、白髪の混じった髭をいじりながら、これ以上はっきり語れないくらい明確に言った。「戦争で死傷者がどれくらいでるかは二の次なんですよ。聞こえはよくないが、米国人は戦争が好きな国民なんです。死傷者がどうこうより、負けることが一番嫌い。私のもっとも好きな言葉はパットン将軍(第2次世界大戦時の米陸軍大将)の『米国は戦争が大好きだし、戦闘そのものも好きだ。いつも闘ってきたし、楽しんできた』というフレーズだ」。
 この時、すぐ横に座っていた中央情報局(CIA)のジェームズ・ウージリー元長官も「同感だね」とうなずいた。
 モリス教授の言を借りれば、「戦争関連で死亡する人数は減っていても、人間が人間である以上、戦争は決してなくならない」ということは確かなようである。   (堀田 佳男)
日経ビジネス2014年5月14日(水)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140512/264387/?P=1
                                                                       
筆者考:
  1. Ian Morris
    Author
  2. Ian Matthew Morris grew up in the United Kingdom. Morris is currently Willard Professor of Classics at Stanford University. Wikipedia
  3. BornJanuary 27, 1960 (age 54), Stoke-on-Trent, United Kingdom



イアン・マッフュー・モリス氏は英国で生まれ育津。現在スタンフォード大学歴史教授出生日:1月27日1960年(54歳)、英国・ストーオントレント町。   教育:1986年ケンブッリジ大学考・古学博士号取得。バーミグハム大学 。  『人間性』でカナダ、アメリカでグッケンハイム特別研究員の資格を与えられる。 『人類5万年 文明の興亡―なぜ西洋が世界を支配しているのか』でアメリカ・ペンクラブ賞他、三つの国際図書賞を受賞 。
戦争は人間にとって利益になるのか?・・・
余りにも率直であっけらかん!としている問い、疑問であるので度肝を抜かれて仕舞いました。この命題は人間の思考方法の多様性を考慮にいれると、議論は沸騰して尽きないでしょう。“人種の坩堝!”と言われ人種に依って培われた価値観、宗教観が其々の異なる異人種が多い米国で大論争が起きているのは当然過ぎる程に当然です。

翻って自虐精神の呪縛の取り憑くかれて、「GHQマッカーサー・違法占領憲法」に悪魔の如き荷張り付いている9条を心酔し持て囃している、国民がうじゃうじゃ!と犇いている日本国!・・・“戦争は人間にとって利益となるか?”の命題が出されたら、大半の国民は右往左往であっちに行ったりこっちに来たりで、思考が乱れ狂乱状態に陥る可能性が非常に高いと推測出来る。
残念ながら、日本人は戦後の教育現場の歪み、荒廃で判断力、分析力が培われず、・・・すなわち世界の民族でも “極めつきの議論下手の特性!”が形成されて仕舞いました。 特に「逝かれ・サヨク」は理論武装などとは縁遠く、やたらと半島人の如く逆切れした建設的な議論の展開などは夢物語となって仕舞うのが落ちです。加えて彼らは討論中に己らが論破されると詭弁を弄して議題を摩り替える特技をもっているので、愚論の展開となるり、戦争は人間にとって利益となるか?”は日本では議論、討論は無理だと、筆者は思います。

✦《戦争で家族や親族、友人・知人をなくしたり、辛い経験をしてきたりした人にとって、戦争を肯定する発言は心を逆撫でするものであろう。考えてみれば当たり前である。自ら望んで戦場での死を選ぶ人はいない。無念な戦死がほとんどだ。一方、納得した人もいるにちがいない。それゆえ、賛否を論ずる議論がさかんに行われている》・・・
筆者の父、叔父は大東亜戦争で出征して不帰の人となりました!。私的な感情となりますが、父、叔父の死は何だったのだろうか?、・・・この素朴な質問は、“国を、家族を守る為に命を捧げた!”などでは簡単に割り切れる物ではありません。戦後70年も経ても未だに私に纏わり付いている素朴な質問ですが、おそらくは納得のいく答えは他人からではなくて自分で出さなければならないでしょうが、筆者が来世に旅立つまで、また旅立っても納得のいく答えは見出せないと思っています。
現在の日本人の資質を考慮にいれると、父、叔父の死は無駄だったのではなかろうか!と思える程の日本人の劣化ぶりです。
ひとつだけ言える事は、『父、叔父と靖国神社に祭られている英霊の方々を冒涜する輩は絶対に許せぬ!』が常に筆者の心の底にある事です。

1万年前は人口の10~20%が戦闘で死亡した・・・

同教授は考古学者でもあることから、1万年前と現代を比較している点が興味深い。その間、戦争と平和、そして人間の力の関係が少しずつ変化してきて、現在は当時よりも平和であると論じる。

 1万年前は部族間の戦闘や抗争が今よりも頻発し、人口の10~20%は戦闘で死亡したと推測している!・・・

✦ 20世紀に入ると、2つの世界大戦があったにもかかわらず、戦争による死亡者は人口の1~2%にまで減った。さらに21世紀になると、国連統計によれば、戦争や紛争によって命を落とす割合は人口の0.7%にまで落ちた!・・・

✦ さらに、戦争が経済的な国家繁栄につながった歴史があると説く。大英帝国やパックス・アメリカーナ(米国の平和)の時代をその象徴として捉えている!・・・

 戦争によって利益を得る人たちがいるという考えは、一般的にも、広く信じられている  米国では第2次世界大戦に突入したことで、大恐慌以来低迷していた景気が回復したと言われている。実際に米国のGDP(国内総生産)は、真珠湾攻撃があった41年には恐慌前の水準に戻っている!  日本でも朝鮮戦争やベトナム戦争の特需で、特定の産業が恩恵に浴したのはまぎれもない事実である ⇒ こうした点を考慮すると、戦場の悲惨さが歴然としてある一方で、利益を得た人たちも確実におり、モリス教授の「戦争は利益になる」という主張には説得力がある!・・・

筆者考:これらの解釈は其々の思考!、・・・宗教観、倫理観、経済観念によって否定も肯定もされるでしょう。筆者の肉親が戦争に命を奪われた事が棘となり喉下に突き刺さっているので、諸手を挙げて肯定は出来ませんが、ある面(科学・技術の進歩)では戦争の功は認めざる得をません。

多くの経済学者が「戦争による景気拡大は幻想」と説く・・・

ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ氏は英ガーディアン紙のコラムで!・・・『戦争は経済的な繁栄と密接な関連性があると論じられ、資本主義には戦争が必要と言われが、“最近ではもうナンセンスな議論!” ⇔ 91年の湾岸戦争でも、経済への悪影響の方が大きかった。経済成長は平和時にこそ達成されるというのが通説』と主張!。

✦ 近年の戦争はコストがかかりすぎて国家財政にとってマイナスとの見方!  ハーバード大学ケネディ行政大学院が昨年まとめた報告書には、アフガニスタンとイラクの両戦争で、米政府は最終的に4兆~6兆ドル(約400兆~600兆円)もの支出を余儀なくされると記されている!⇔ 両国に派遣された総計20万と言われる米兵たちは、派兵されていなければ米国内で雇用され、経済活動に貢献していたはずである!・・・

筆者考:『たらは北海道!⇔ Hindsight(あと知恵)』であり、・・・『両国に派遣された総計20万と言われる米兵たちは、派兵されていなければ米国内で雇用され、経済活動に貢献していたはずである』、これは疑問です。当時は景気後退の真っ只中!であり、派兵されなかったとしても20万の雇用が創出されたか!かは大いに疑問です。例え400~600兆円の支出を余儀なくされても軍需産業が雇用を創出し、各軍需関連企業が潤い、強いては株主も潤い、景気が好転した事は事実です。単純に支出の面から捉えるのは無理があります。ならば、イラン、イラク戦争がなかった米国の経済はどうなっていたかを考察するのも大切だと思います。

✦ 経済学者ジェームズ・ガルブレイス氏(ジョン・ケネス・ガルブレイスの息子)も戦争悲観論者だ。「過去100年間だけを見ても、すべての戦争は程度の差こそあれ、インフレをもたらしています。戦争になると物価や賃金が上昇する一方、購買力が下がってインフレが加速されます。その中で富裕層はさらに裕福になり、労働者の貯蓄は減るという悪循環が生まれる!・・・

筆者考:近来のインフレの最大の原因は戦争ではなくて、金融政策(人為的に操作された低金利政策による処が多い。金融緩和で金余り現象が発生して、よりよい投資利益を求めて株、商品市場に資金が流入するからです。

✦ ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は戦争による経済効果をプラスに捉えており、モリス教授の側に立つ!・・・

「米国は戦争が大好き」・・・

✦ 日本国内に目を向けると、いざとなったら中国を含む隣国との戦争も厭わないという風潮が一部で見られるが、大多数の市民は戦争など百害あって一利なしとの考えかと思う。それは第2次世界大戦で敗戦国となった時の教訓が大きいからだろう。人命の損失や国土の荒廃は計り知れず、2度と戦争をすべきではないとの思いは日本人の共通項になっているはずだ。戦争という殺戮の場で、無辜の市民が命を落とす状況を作ってはならない。こうした思いが経済的利益を求める思いよりも大きいのが日本人のいまのメンタリティーではないか!・・・

筆者考:“戦争という殺戮の場!”/“第2次世界大戦で敗戦国!”・・・単なる殺戮としか見えぬ、また大東亜戦争を「第二次世界大戦!」と表現する文脈は偏っており、自虐思考が紛々としており、モリス教授の論旨ではありません。寄稿者(堀田 佳男)の主観が迸っている観が有ります。では日清日露戦争の時の国民感情は?。

✦ 保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)のマイケル・レディーン元研究員は!、・・・「戦争で死傷者がどれくらいでるかは二の次、 米国人は戦争が好きな国民  死傷者がどうこうより、負けることが一番嫌い ⇒ 私のもっとも好きな言葉はパットン将軍(第2次世界大戦時の米陸軍大将)の『米国は戦争が大好きだし、戦闘そのものも好きだ。いつも闘ってきたし、楽しんできた』というフレーズだ」・・・

筆者考:”負ける事が嫌い!”・・・これは『戦争の天才!』といわれるアングロサクソンの真骨頂といえる。パットン将軍は米国が生んだ天才的な軍才に恵まれた将軍で、ヨーロッパ戦線ではパットンなくしてドイツを破る事は不可能だった!といわれている程の人物です。この人物を例に出して、米国が戦争好きというには違和感を覚えます。

 モリス教授の言を借りれば、「戦争関連で死亡する人数は減っていても、人間が人間である以上、戦争は決してなくならない」ということは確かなようである。

“人間が人間である以上!”・・・自然界の生物にはすべて生存本能(種族保存)が備わっている。すなわち人間も生き物である以上は生存本能を有している。
生存本能⇔種族が存亡の危機に直面すると自動的に戦いのスイッチがオンとなる。
闘争は深く人間の本能として心底に淀んでいる!・・・戦争を避ける為には『ハリネズミの生態(敵を倒す強大な力を備えておらずも、敵が襲うと針を逆立て自分は死んでも敵に多大な損傷を負わす)』を学ぶ事です。
つまり、敵国を完膚なきまでに攻撃、破壊する軍事力を備えず敵国が攻撃する事を躊躇する抑止的な効率のよい軍事力を備える事が最大の戦争防止となるでしょう。


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