二階俊博・自民党幹事長 憲法改正へ公明・野党に張り巡らせた「すごい人脈」
ZakZak(2016.08.09)
さっそく本領発揮だ。
「撃ち方やめ」
今回の自民党役員人事で自民党幹事長に就任した二階俊博氏(77)は、東京都知事選を受けて就任会見でいきなりこう発言した。
選挙では、自民党の意向を無視して出馬した小池百合子氏が圧勝した。本来、自民党本部や都連は除名しなければ示しが付かない。だが、小池氏が圧倒的支持を集めた以上、処分は「小池イジメ」と映り、小池氏が世論の応援を背に都議会で主導権を握ることにつながる。小池氏が「新党」を作る可能性もある。
自民党幹部らが決断できずにいたところ、二階氏は「小池氏との手打ちが安定につながる」と現実的に即断した。「示し」など意に介さず、「処分の必要なし」とズバッと言い切って、事を収めたのだ。
安倍晋三首相としては、こうした「変幻自在の政局回し」とも言うべき手腕を「今後、党運営で発揮して政権を支えてほしいと期待している」(自民党幹部)のだという。
もう1つ、安倍首相の意図を、自民党ベテラン議員は次のように言う。
「安倍首相は、いよいよ政治家の信条でもある『憲法改正』に着手する。ただ、憲法改正作業を進めるのは、政府ではなく国会や党レベルの仕事。衆参の憲法審査会での議論や折衝が注目されるなか、二階氏は『9条改正』に慎重な公明党に強いパイプを持っているうえ、野党各党へ張り巡らせた人脈がすごい。各党への根回しなどを駆使しながら、憲法審査会の議論を早める力がある」
さらに、改憲に時間がかかる場合も想定して、二階氏は「安倍首相の総裁任期を延長してもいい」と公言してきた。これも就任早々、「検討機関を設置して年内に結論を出す」とブチ上げた。
党内からは「話題にするのが早すぎる」と異論が噴出し、安倍首相も「考えていない」としたが、二階氏をよく知るベテランは分析する。
「逆に、任期切れギリギリで任期延長の話が出たら、『ポスト安倍』も絡んで反対者が出て大混乱する。一気にやった方がリスクは少ない」
ただ、「二階氏を警戒すべきだ」という首相周辺の声もある。
「二階氏は、自民党政権維持が第一だ。安倍政権の支持率が下がれば、他の人物を担ぐかもしれない。幹事長にしてもらった以上、そんな仕打ちはしないとは思うが…」
二階幹事長の起用が、安倍首相にとって奏功するか-。いずれにしても、しばらくは、その剛腕に振り回されそうだ。 (政治ジャーナリスト・鈴木哲夫)