(社説)日韓首脳会談 協調の利益を見すえて
朝日新聞デジタル(2016年9月8日)
北朝鮮の挑発が続き、中国の動きも不透明さを増している。隣国同士、日本と韓国はますます利害が重なる関係にあることを自覚したい。
安倍首相がきのう韓国の朴槿恵(パククネ)大統領とラオスで会談した。昨年末に慰安婦問題で両政府が合意に達して以降では、3月に続き2度目の会談だ。
いずれも国際会議を活用しログイン前の続きた首脳外交である。一時は極度に冷え込んでいた両政府間の空気が変わり、直接対話が通例化している流れを歓迎したい。
北朝鮮は今週、事前予告なしに弾道ミサイルを3発撃ち、北海道・奥尻島沖の日本の排他的経済水域内に落下させた。
8月には日本海で、潜水艦から弾道ミサイルを発射する実験を成功させた。移動式発射台や潜水艦からの発射は兆候がつかみにくく、両国にとって脅威のレベルが高まった。
これに加えて懸念されるのは中国の姿勢である。韓国が在韓米軍への新たなミサイル迎撃システムの配備を決めたことに、強く反発。一時の中韓接近の流れは大きく変わった。
北朝鮮の脅威に備えるうえで、中国との向き合い方に苦慮せざるをえない。それは、日米韓がともに抱える難題だ。
それだけに日韓首脳が今回の会談で、北朝鮮問題をめぐる連携を緊密にすることで合意したのは当然のことだろう。中朝の動きが読みにくくなるなか、日米韓はいっそう結束を強める努力を続ける必要がある。
日韓関係の全体的な底上げを図るうえで重要なのは、慰安婦問題をめぐる合意の履行を着実に進めることだ。
韓国政府は元慰安婦らを支援する財団を設立し、日本政府は国家予算から10億円を出した。今後は財団が元慰安婦の意向を聞き、1人1千万円程度の現金を支給する。
この合意には日韓双方にいまも賛否両論がある。とくに韓国では、来年に大統領選を控えて野党が合意を追及しており、朴政権は苦しい立場にある。
しかし、さまざまな内政上の困難さが伴ったとしても、この合意で生まれた関係改善の機運を失速させてはならない。
両国間ではすでに変化が生まれている。通貨の急落時に備える「通貨スワップ協定」の再締結の動きがあるほか、総務省と韓国の行政自治省との交流事業が5年ぶりに再開した。
流動化する国際環境の中で、日韓が協力すべき課題は山積している。両国民が直面する現状をしっかり見つめ、連携強化への芽を大切に育てたい。