2024年9月1日日曜日

100歳の長寿者の世界観‼・・・

      長生きには!〜、
死別や孤独、認知症などで介護を必要とするなど、
マイナスイメージが付き纏う!・・・

日本を含む6カ国を対象にしたある調査では!〜、
  〘100歳まで生きたい〙と答えた
  日本人の割合は僅か1割と最低だった!・・・
もっとも多いのは『80歳』という結果が出た。

25年後には100歳以上が50万人を突破するともいわれる超長寿国ニッポン。これまで500人以上の百寿者に会い、調査・研究を続けてきた大阪大学教授で老年心理学者の権藤恭之さんがこのたび『100歳は世界をどう見ているのか』を刊行。今回は本書の中から、『できることが減っても幸せな人生』の在り方を説く。


100歳の人は機能の低下によってすでに行動に多くの制限があり、
視力が落ちて耳も遠い人が多く、しかも家族や親しい友人の死も多く経験しているが…(写真はイメージです) 

■ 年齢を証明できるのは書類だけ:

生物が生まれてからどれだけの時間が経過しているのかを、記録や他者の記憶によらず、その生物そのものだけを情報源として正確に知る方法は今の処はなく、… 樹木であれば年輪が刻まれており、それを数えることで樹齢何千年でも確認する事ができる。

人間のしわは年輪に例えられるが!〜、
しわは年輪のように時間経過を正確に刻むものではない。


以前、世界の長寿地域が話題になった事がある。
長寿地域のひとつにペルーの山岳地帯が挙げられていた。

その地域で生活している人は年を取っているのに壮健であるとの話題だった。然し、研究者が実際に現地で調査をした結果、年を取って見えるのは強い紫外線に当たっているからで、実際の年齢は見た目の年齢よりもずっと若かったと報告されている。

 ある研究では、若い世代に83歳前後の人たちの顔写真を見て年齢を予測して貰った処、予測された年齢は64歳から85歳と大きな開きがあった。また、その見た目年齢は、実際の年齢よりもその後の死亡までの期間と関係が強かったとの事が判明。

実際の年齢よりも見た目に
      生物学的な年齢が現れるというのは!〜、
     老化現象の摩訶不思議な点といえる!・・・

生物学的な老化に関しては、白髪が増えるとか筋力が低下するといった具合に変化が起きる事がわかっていても、どうして起きるのかという根本的なことに対する答えはない。

生物の細胞は絶えず新しく生まれ変わり!〜、
  その過程で老いが生じその為に、
     年輪のように同じ物質が体の中に残らない!・・・

近年、遺伝子の研究が進歩し!〜、
   個人の生物学的年齢を推定する
       科学的な技術が開発されつつある!・・・
DNAの末端に、テロメアという細胞分裂を繰り返す際に短くなっていく部位があり、…。これは加齢とともに短くなる。DNAがたんぱく質をつくる機能を制御する仕組みであるメチル化が加齢と関係することもわかってきました。しかしこれらから測定できるのは、生物としてどれくらい年齢が進んでいるのかという生物学的な年齢です。したがって、個人の生物学的特性やこれまでの生活環境にも大きく影響を受けるので大まかな年齢はわかったとしても、正確な年齢の推定には使えないのです。これだけ科学が進んだ現代でも、年齢を知る手がかりが書類しかないというのは面白いと思いませんか?。

■ 長寿と遺伝の関係は?:
では、人間はいったい何歳まで生きる事ができるのか?

     ジャンヌ=ルイーズ・カルマン

これまでの世界最長寿者は!〜、
     ジャンヌ=ルイーズ・カルマンさん!・・・
122歳と164日です。フランスの女性で1875年に生まれ、1997年に弔事を全うしてあの世に旅立った。


男性の世界最長寿者は!〜、
      116歳と54日の木村次郎右衛門さん!・・・
1897年に生まれ2013年に現世に別れをつげた。
このふたりについては研究者による調査データが残っていますが、認知機能の衰えはなかったという結果が出ている。

カルマンさん、木村さんの例を考察すると!〜、
      人間の寿命はいったい
    どこまで延びるのか?との疑問が生じる!・・・
記録上で検証された世界初の110歳到達者は、オランダのヘアート・アドリアーンス・ブームハルトさんという男性で、1788年に生まれ1899年に亡くなっています。記録の正確性ということもあり、20世紀になって本格的に長寿の記録が取られるようになったと思われます。

 最長死亡年齢(その年に死んだ人の中で最長寿者の年齢)の変遷からすると、最長死亡年齢は上昇し続けています。医学の進歩や社会環境の変化により、特に先進国では長寿化が確実に進んでいます。

 しかし寿命の長さには限界があるのではないか、という説もあります。寿命がどこまで延びるのかという問題について、私は、そもそも人間は遺伝的にそんなに長生きができないようにできていると考えています。つまり、生物としての遺伝的な多様性を保つために、自分は死んで次の世代につなげるようになっていると私は思うのです。



最近、長寿の研究でハダカデバネズミが注目されている。
老化に対して耐性があり、代謝を低下させることで酸化のダメージを防いでいるなど、齧歯目にもかかわらず30年も生きることができるために生物学者がその長寿の要因を探っている。
 もしかしたらその研究から長寿をもたらす要因が見つかる可能性が高い。一方で興味深いことに、ハダカデバネズミの個体間の遺伝子の多様性は極端に小さいと言われている。

そもそも遺伝子の多様性とは!〜
     個体の特徴を生み、さまざまな環境下で
種の絶滅を防ぐために生物に備わった特徴といわれている!・・・。ハダカデバネズミは変化の少ない、砂漠の限られた地域で生活しているため、似たものばかりになって現在の状態に至った。

 地上で生活している人間ではそのようなことは起こりそうにありえない。今後iPS細胞が実用化され、古くなった臓器を置き換える事が
可能になると、150歳くらいまで生きる人は出るかも知れないが、…そこまで、脳が個人の人格を維持したままの状態を保ち続ける事ができるのか? 余りにも長生きすると、人は、『何かわからない自分』になってしまうかも恐れがある。

■ できることが減っても不幸にならない:
加齢により、多くのことを人は手放す‼、…
では、多くの人はそのまま不幸になるのだろうか?

ある専門家は高齢者の人を調査する際、PGCモラールスケールという質問票を用いて、… その人がどのような精神状態であるかを、〘心理的動揺(感情の揺らぎ)〙、〘老いに対する態度(老いの受け入れ』〙、〘孤独感・不満足感(気分の状態)〙などから考察し、幸福感を評価しようとする質問票。

例えば『あなたには心配なことがたくさんありますか
?』は〘心理的動揺〙に、『あなたは若いときと同じように幸福だと思いますか』という質問は〘老いに対する態度〙に、『生きていても仕方がないと思うことがありますか』は〘孤独感・不満足感〙を評価する。

質問は全部で17項目あり、個人的には、100歳の人にこんなことを聞いてもいいのだろうかと思うような質問(たとえば寝たきりの人に『生きていても仕方がないと思うことがありますか?と聞くなど』も中にはある。いずれにせよこのPGCモラールスケールは現在でも多くの高齢者調査で使われているのが現状である。

さて、この質問から計算できる得点を異なる年齢間で比較すると、驚くべき結果が出ました。

100歳の人の得点が、中年期の人や若い高齢者たちのそれとあまり変わらなかったのです(図1)。若い人は健康な人が多く、体も自分の思った通りに動かせるし、老いを意識する機会も少ないと思います。一方、100歳の人には機能の低下によってすでに行動に多くの制限があり、視力が落ちて耳も遠い人が多く、しかも家族や親しい友人の死も多く経験している。にもかかわらず、幸福感がそれほど下がっていないと考えられたのです。


この結果から、年齢が高くなるにつれて、体の状態と心の状態の関係は弱くなるのではないか、言い方は悪いが『ぼろは着てても心は錦』状態がはっきりしてくるのではないかという事が見えてくる。

 同じデータから自立が難しい人のみに注目すると、もっとはっきりした結果になります(図2)。65歳から90歳までは、自立が困難な人の幸福感は低いですが、同じような状態の100歳を見ると、むしろ幸福感が高いことが見えて来る。
 後年、85歳以上の方たちに行った調査でも同じように病気の有無や、身体機能のレベルと幸福感の関係が弱くなる事が認識される。


■ 社会から離脱する生き方:
さて、こういった心の変化を『老年的超越』という言葉で表現した研究者がいる。

       ラルス・トルンスタム

スウェーデンの社会老年学者ラルス・トルンスタム
     (ラーシュ・トーンスタム)教授が!〜、
      大規模な調査を踏まえて
    1989年にこの上述の概念を提唱した!・・・
 
加齢に伴う、社会で求められてきた物質主義的で合理的な
 世界観から宇宙的、超越的、非合理的な世界観への転換〙、…
       という意味とされる。
 これは、年を取るに従い、世界を理解する枠組みの考え方が変わったり、世界のとらえ方が変わってくるという事を示している。
おそらく多くの人にとっても同様で、昔考えていたのと今考えている世界は異なり!、… 若い時はまわりが敵だらけのように感じていても、今はいい人ばかりというような感覚に包まれる。

トルンスタム教授がこの理論を提案した頃は!〜、
『若さや健康、自立に価値を置き、活動的』、という米国流の理想的にと年齢を重ねるとの考え方が主流だった!・・・

トルンスタム教授はそのように自立して能動的に年を取っていくことが理想であるという価値観が全てではないだろう!と考え、… 
自らの理論を構築した。これは、能動な面に着目する『活動理論』に対して米国流では『離脱理論』と呼ばれる。
 彼が禅仏教に注目した背景には、隠遁や隠居という、加齢とともに世俗から離れ、自然や宗教(神仏)と向き合う、社会から離脱する生き方があったからだと考えらる。

トルンスタム教授はスウェーデンで
      65歳以上の約1600人に調査を行い!〜、
約20%の人が『老年的超越』を達成していると報告している!・・・
 その達成には、年齢が高いこと、活動的であること、専門的職業に就いていたこと、比較的都市部に住んでいること、大きな病気を多く体験していることが関係していたそうである。

■ 過去の役割や関係性から自由になれるか?:
老年的超越における、対人関係の変化について見ていきましょう。

『社会との関係』では、過去の社会的な地位や役割に拘らなくなり、対人関係でも限られた人との深いつながりを重視するようになる。トルンスタム教授は、これを『社会規範に基づく価値観からの脱却』と説明してる。

管理職経験のある男性が定年退職して社会活動を始める時、これまでの仕事の習慣で、強引にリーダーシップを取ったり同じ立場の仲間に対して命令口調で話し、関係がギクシャクして仕舞う話を聞く事がある。この例のように、慣れ親しんだ行動を変えるのは非常に困難ものとなる。

 若いうちは新しい人間関係が増えます。これは、長い人生を考えれば合理的な行動ともいえます。知り合いが多いほどピンチを救ってもらえる可能性が増えるからです。

加齢に伴い、人間関係の幅は小さくなる。
定年退職や引退も大きな契機になり!〜、
      それまでの社会的役割も変幻する!・・・
仕事だけでなく、家族の中でも中心的な役割を若い人に譲らなければならなくなる。
そういった状態をうまく受け入れていく事が、社会的な側面による変化への対応になる。高齢者を対象に老年的超越の話をすると、…
男性の高齢者には受けが悪くなるのが一般的である。
 現代の高齢男性たちは、社会においても家族においても古典的な役割意識を持ってきた人が多いのでしょう。

さまざまな人間関係のトラブルがあって、それを生涯引きずる人もいる一方で、『過去に嫌なことはあったけれど、なんとなくもうどうでもよくなった』と語る85歳の女性も散見できる。
100歳になると社会的な役割や関係性は大きく変わり、… そのような拘りから開放される処に『超越』が存在すると推察できる

                                         

人間はポジティブな感情とネガティブな感情、過去と未来の間を揺れ動きながら生きている。

若い人も高齢者も百寿者も同様!〜、
揺れ動きつつも、自分でできる事を探し、他者に頼ることを受け入れ、色々な工夫をしながら幸せに向かって歩を進める事が大切となる!・・・
 そして、周りの人がそうなるようにサポートし、その経験を自分の幸せに繋げていく、… これが一番の鍵でしょう‼。百寿者は元気な人からそうでない人まで、そのことを感じさせてくれる貴重な存在です。

参考文献:

【100歳の老人は世界をどう見ている?心理学者が「幸せですか」と聞いた驚くべき結果とは】:

https://diamond.jp/articles/-/348991?utm_source=daily_dol&utm_medium=email&utm_campaign=20240830