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ホンダとLGエネルギーソリューションが米国で電池工場を新設する【この記事のポイント】◼︎ ホンダが韓国のLG系と米国にEV電池工場を新設する
◼︎ 6100億円を投資し2025年の量産開始をめざす
◼︎ EVの主力市場である米国で安定した電池調達を狙う
ホンダとLGエネが合弁会社を設立する。合弁の出資比率はホンダが49%、LGエネが51%。立地はホンダの主力工場のあるオハイオ州を最有力に検討を進めている。リチウムイオン電池を製造し年間生産能力は最大で40ギガワット時。標準的なEVで70万~80万台分に相当する。全量をホンダの北米工場向けに出荷する。
LGエネは電池のシェアで中国の寧徳時代新能源科技(CATL)に次ぐ世界2位で、米ゼネラル・モーターズ(GM)のほか欧州ステランティスとも北米での電池合弁を設立し、生産能力を高めている。
ホンダは40年に全ての新車をEVか燃料電池車(FCV)にする目標を掲げる。米国では24年にGMとLGエネが共同開発する車載電池「アルティウム」を搭載したEVを2車種発売する。
26年にはホンダ独自で開発するプラットホーム(車台)を採用したEVを発売する計画で、LGエネとの合弁で生産する電池を搭載するとみられる。ホンダは米国で30年に約80万台のEVを生産する計画。EV専用の生産ライン新設なども検討している。
米国は中国に次ぐ世界2位の自動車市場で、ホンダにとっては世界販売台数の3割強を占める主力市場だ。同国最大の車市場であるカリフォルニア州は25日、35年にハイブリッド車を含むガソリン車の販売を禁止する規制を発表した。米歳出・歳入法が成立し、電池の産地など一定の条件を満たすEVには税控除がある。EVにさらに追い風が吹くとみる。
車メーカーはコストを抑えるためEV生産地で電池調達するのが基本戦略だ。20年にはCATLに1%出資して確保しやすくした。中国で27年までに投入する10車種のEVには同社の電池を搭載する方針だ。一方、米国はEV生産を自国で囲い込む政策を進める。米中対立などで供給網が断絶するリスクを減らすため韓国企業と組む狙いもありそうだ。
全固体電池など次世代電池も独自開発を進める。現在主流の液系電池よりも安全かつ小型化が可能で、航続距離を延ばせる。ホンダは栃木県さくら市の研究所内に約430億円を投資して、電池生産する実証ラインを設置し、24年春に稼働させる。20年代後半に発売する車種への搭載を目指しており、今後量産体制も整えていく。
車載電池市場は中国CATLが首位で、LGエネのほかSKイノベーションとサムスンSDIの韓国電池3社が追う構図だ。米中対立が深まる中で欧米の完成車メーカーの中には中国勢からの電池調達の拡大をリスクとみる企業もあり、受け皿として韓国勢の受注増につながっている。
25年ごろには韓国3社合わせて北米で12カ所の電池工場が稼働する見通し。日本勢ではパナソニックもカンザス州にEV電池の新工場を設けるなど米国での投資が活発になっている。
(田辺静、ソウル=細川幸太郎)