https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC290BO0Z20C22A9000000/?vn_cid=NMAIL007_20220929_H&unlock=1
する。政府が原子力発電所の新増設・建て替えを想定しない東日本大震災以降の方針を転換して次世代型原発の開発・建設を検討するなか、「革新軽水炉」と呼ばれる新型原子炉の2030年代半ばの実用化を目指す。政府の方針転換を踏まえ、産業界でも具体化に向けた動きが出始めた。
三菱重工業は関西電力と北海道電力、四国電力、九州電力の4社と共同開発する。関西電力は29日に「これまでも安全性や経済性を向上させた次世代軽水炉の設計を検討しており、三菱重工業と協力している」とコメントした。
電力4社が採用している三菱重工の加圧水型軽水炉(PWR)をベースにした新型原子炉の実用化を目指す。出力60万~120万キロワットの規模を想定する。核反応を調整する制御棒の駆動方式を改良するなどして、出力を半分に落としたり、元に戻したりする時間を17分と従来の4分の1程度に短くする。
地震などの自然災害や大型航空機の衝突などのテロに対して高い安全性を担保する。地下式構造として被害を受けにくくしつつ、格納容器の外壁を強靱化し破損確率を既存の原子炉の100分の1未満に低減する。
炉心溶融が起きた場合でも、溶け出した核燃料が外部に漏れないよう原子炉容器の下に備えた「コアキャッチャー」でため、放射性物質を原子炉建屋内に封じ込められるようにする。炉心冷却のための電源も充実させ事故が起きても影響を発電所敷地内にとどめることができるという。
既存の大型原発は、頻繁な出力変更を想定していない。出力を半分に落としたり、元に戻したりするには約1時間かかるケースもあり、より機動的に出力を制御できるようになる。風力や太陽光といった再生可能エネルギーの活用は天候や時間帯によって発電量にばらつきがある。こうした弱点を、新型原発で補うことができるとみる。
三菱重工は出力30万キロワット規模の小型原発のほか、高温エネルギーで水素も作り出せる高温ガス炉の開発も進めている。使用済み核燃料を使う高速炉でも米新興企業に技術協力する方針で、安全性や経済性を高めた次世代原発の開発を加速させている。
政府は世界的なエネルギー市場の混乱や電力需給の逼迫を背景に、東日本大震災以降議論が進んでこなかった原発への姿勢を転換。岸田文雄首相は8月、既存の軽水炉型の原発をベースに安全性を高めた「革新軽水炉」など次世代炉の新増設・建て替えを検討するよう指示した。
遅れ馳せながら、日本政府もようやく重い腰を上げて、エネルギー危機を回避する要の新型原子炉の開発に踏み切った事は朗報です。