全固体電池量産の「からくり」を公開】:
異なる電池の材料を載せた搬送パレットが上下2つのレールを高速で流れ、相対速度がゼロの同期地点になると、目では追えない速さで、材料を固定していた上のパレットの「爪」が外れ、絶妙のタイミングで下のパレットの爪が受け取り材料が重なっていく。
EVの航続距離を1000キロ超に伸ばせるこの先端技術は、電池を構成する正極材、負極材、固体電解層を隙間なく密着させることが製造上の大きな課題だ。
量産には素材にダメージを与えることなく、高速・高精度で電池材料を積層する難題があるが、日本伝統のからくり仕掛けを自動車製造に応用したトヨタ流がそれを解決しつつある。
量産には素材にダメージを与えることなく、高速・高精度で電池材料を積層する難題があるが、日本伝統のからくり仕掛けを自動車製造に応用したトヨタ流がそれを解決しつつある。
余分な動力や配線も増やさないシンプルな機構は、生産の安定性にもつながる。
一方、エンジン部品などの鋳造品を扱う明知工場(愛知県みよし市)では、大形の車体部品をアルミで一体成形するギガキャストの設備が動き出している。
一方、エンジン部品などの鋳造品を扱う明知工場(愛知県みよし市)では、大形の車体部品をアルミで一体成形するギガキャストの設備が動き出している。
この新工法はテスラが実用化した革新技術で、トヨタの導入は「まねだ」とも揶揄(やゆ)される。
この点は、トヨタも「われわれの想像を絶するようなモノづくりをされて、正直びっくりした。
新しい選択肢をベンチャーから教わってチャレンジしている」(生産部門を統括する新郷和晃執行役員)と認める。
ただ、ギガキャストの実用化には、他社に比べて20%の生産性向上という〝テスラ超え〟の目標が掲げられている。それを実現するのが、「匠」と呼ばれる熟練工の技能とデジタル技術を組み合わせたトヨタの製造力だ。
装置が巨大化する新工法では通常、クレーンなどによる定期的な鋳型の交換作業に24時間程度もかかる。これをトヨタはわずか約20分で実現する。創業以来、培ってきた匠の技で独自の形状の金型を開発。試作機は、装置のベースの汎用(はんよう)型と、製造品の形状の専用型を分離する構造とすることで専用型の自動交換を可能とした。これは現状「トヨタしかできていない」(新郷氏)という。