2013年7月29日月曜日

【正論】安倍安定政権は焦るロシア待て 北海道大学名誉教授・木村汎


 ≪北方領土はいずれ日本有利に≫
 安倍晋三首相率いる自民党が参議院選で圧勝し、安倍政権が長期安定化する見通しが強まった。こうした事態の展開を見て、ロシアのプーチン政権はさまざまな手を打ってくるに違いない。だが、その多くは、日本を揺さぶるだけの「見せかけ」に過ぎないだろう。安倍政権は軽々にそれに乗る愚を犯してはならない。状況はいずれ日本側有利に転じるとの大局観に立ち、「お手並み拝見」といった余裕をもって、ロシア側が焦り始めるのを待つべきだろう。
 プーチン政権が今後、日本に対して採るのは、ほとんど「パカズーハ(見せかけ)」戦術と予想して間違いない。パカズーハとは、ロシア語の動詞「ポカザーチ(見せかける)」から派生した語で、本心を偽ったうわべ上の擬態もしくはジェスチャーを指す。
例えば、中露関係が変わらず良好であるかのように見せかける。この3月、習近平・中国国家主席が訪露した際、プーチン大統領は確かに、これ以上ないほどの歓待ぶりを披露した。ところが、習主席の訪露中とその後の北京に対するモスクワの態度を注意深く観察すると、中露間には微妙な思惑や見解の食い違いが漣(さざなみ)のように立っていることに気づく。中国側が米国への対抗上、ロシア側に擦り寄る姿勢を示しているにもかかわらず、モスクワは北京の期待には必ずしも応えようとしない。
日本に向けては、プーチン大統領は今こそ領土交渉妥結の絶好機が到来しつつあるかのごとく見せかけようと懸命である。だが、プーチン氏は現在、内政、外交とも難題に直面し、権力の座にとどまるのに汲々(きゅうきゅう)としている指導者なのである。対外的に思い切った決断などなし得るはずはない。
 ≪環境整備めぐる幻想を断て≫
 プーチン氏の日本相手の「見せかけ」戦術で、とりわけ日本側が細心の注意を払わねばならないのが、「環境整備」の勧めだ。日本側が環境整備に努め、日露関係全体の改善に努力すれば、あたかも領土返還が実現するかのような幻想を抱かせる手法である。
 では、果たして、日本がどの程度までロシア側に協力したら、モスクワが四島返還に踏み切る環境が整備されたということになるのか。この問いへの答えは定かでないどころか、その判断は一重にロシア側に委ねられている。となると、日本側は未来永劫(みらいえいごう)、ロシア側に経済、科学技術、医療、農業、その他の分野での協力を迫られる恐れなきにしもあらずだ。
 以上で、安倍首相が採るべき対露戦略は自(おの)ずと明らかだろう。
 まず、現時点ではまだ対露交渉の最良の機会が訪れていないと自覚すべきだ。プーチン氏が置かれている現状から判断する限り、日本側は決して今、勝負に出るべきではない。米国からシェールガスが入ってきて、わが国がロシアの石油やガスを必要としなくなるのも2017年以降である。
次に大事なのは、政治と経済を完全に切り離してはならないことだ。端的にいえば、ロシアが欲しいのは日本の経済で、日本が欲しいのは領土である。己の欲しいものを得るために他が欲しいものを差し出す。それこそが取引成立のポイントであり、正常な交渉決着の姿である。キッシンジャー元米国務長官は、政治と経済のリンケージ(関連)は戦術でなく、むしろ現実と見なすべきだと言う。
 「スマートパワー」という概念の提唱者であるジョセフ・ナイ米ハーバード大教授は、ハードパワーに文化力などのソフトパワーを結合して用いるのが真にスマートなパワーの使用法だと、例え話で説く。ハードパワーであれ、ソフトパワーであれ、1つだけを用いるのでは、ボクサーが右手もしくは左手だけを用いるのに似て、勝利できるはずはない、と。
 ≪国際協力銀行資金は大切に≫
 戦後日本は、国際紛争を解決する手段として軍事力を使用することを自らに禁じている。したがって、引き算すれば、文化力と経済力しかないことになる。文化力というのは、もともと直接的な外交交渉力へは転換されにくいので、消去法でいけば、日本政府には経済力をフルに用いる以外の術は残されていないことになる。
 だが、日本は自由主義経済を建前としているから、北方領土問題を軸とする日露関係の成り行きいかんにかかわらず、民間企業がロシア市場へ進出したいと欲するなら、止める手立てはない。
 となると、対ソ交渉の切り札として日本政府に残される手段は、国際協力銀行の資金だけになる。この資金は日本国民の血税を集めたものにほかならない。それだけに、北方領土問題の解決-平和条約の締結をロシア側に迫るための環境整備に資する、という確信が持てる場合以外には、同銀行の資金を用いてはならない。
 さもなければ、ロシア人の間ですでに形成されかけている日本人観がさらに強化されることになろう。日本人による領土返還要求はあくまで建前にすぎない、本音は実はロシアからの資源の安定供給にある、という誤解である。(きむら ひろし)
2013.7.29 03:22 正論


                          



筆者考: 

ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン

Владимир Владимирович Путин

Vladimir Vladimirovich Putin



   
 ロシア連邦⇔第4代大統領
任期・・・2012年5月7日 – (現職)

 ロシア連邦⇔第2代大統領
任期・・・2000年5月7日 – 2008年5月7日

ロシア連邦⇔第5代首相
任期・・・1999年8月16日 – 2000年5月7日
元首⇔ボリス・エリツィン大統領
ロシア連邦⇔第9代首相
任期・・・2008年5月8日 – 2012年5月7日
元首⇔ドミトリー・メドヴェージェフ大統領
ベラルーシ・ロシア連合国家⇔初代閣僚評議会議長
任期・・・2008年5月27日 –
元首⇔アレクサンドル・ルカシェンコ議長

出生・・・1952年10月7日(60歳)
 ソビエト連邦、レニングラード
 (現:サンクトペテルブルク)

政党・・・ソビエト連邦共産党( - 1991年[1])
無所属・・・(1991年 - )
統一ロシア党首

配偶者・・・リュドミラ・プーチナ (1983 - 2013)
  
プーチンの概説
プーチンは、元KGBスパイ、現在のロシア連邦の政治家で、・・・特に大きな影響力を持っている。 最終学歴レニングラード大学(現・サンクトペテルブルク大学)法学部卒業。学位法学士サンクトペテルブルク大学)、経済学博士候補1997年)。階級は予備役大佐
1999年12月31日ボリス・エリツィンの大統領辞任により大統領代行を務めたのち、2000年ロシア大統領選挙に勝利して正式に大統領に就任した。2004年の大統領選挙では再選を果たし、2008年5月7日まで大統領を務めた。そして後任の大統領であるドミトリー・メドヴェージェフの指名により同月8日に首相に就任した。
  大学4年生のときにKGBからのリクルートを受け、プーチンは1975年に同大学を卒業後、KGBへ就職する。KGB職員であるためにはソビエト連邦共産党への入党が条件だったため、プーチンは共産党員になった。


人物像


その経歴から、「冷酷な性格」や「粗野」という批評を受けることが多いが、ロシア国内ではメディアを通じて非常に紳士的な姿勢をアピールしており、ロシア国民からの人気もきわめて高い。日本では「冷酷な紳士」で、尚且つ「有能な元工作員」と言う、スパイ映画などにおける定番のKGB職員のイメージで見られることが多い。

釣りを趣味とし、競馬のファンでもある。煙草は吸わず、酒もほとんど飲まない。また、犬好きで、自身もラブラドール・レトリーバーを飼っている。その愛犬は「コニー」という名前であり、徹夜でお産の世話をしたこともある。
 2012年7月には秋田県より雌の秋田犬1頭が贈られ、自ら「ゆめ(夢)」と名付けている。

11歳の頃より柔道とサンボをたしなみ、大学在学中にサンボの全ロシア大学選手権に優勝、1976年には柔道のレニングラード市大会でも優勝した・・・柔道について「柔道は単なるスポーツではない。柔道は哲学だ」と語っている。

数ある辛辣、仰天、皮肉な発言の数々から、目に付いた(感心)発言!、我が国の政治家に聞かせたいと思ったものを抜粋!・・・

●「ソ連が恋しくない者には心(心臓)がない。ソ連に戻りたい者には脳がない」(2000年)

●「我々の敵はテロリストでなく、ジャーナリストだ」

●「(地球温暖化のおかげで)毛皮のコートを買う金も節約できる」

●「謝罪は1回すれば十分だ」(2005年5月、第二次世界大戦の際にソ連とドイツが密約を交わしソ連のバルト三国併合を取り決めたことに対して)

●「(アメリカは)世界経済の寄生虫とは言わないが、ドル基軸の地位に寄生している」




政治姿勢

✦《内政》

プーチンはソビエト連邦時代の「強いロシア」の再建を標榜しており、ロシアの伝統的政治手法として、国民の愛国心に訴え、政府に対する求心力を強化しようとする政治家として知られる。
 宗教を徹底的に弾圧したソ連時代とは一線を画し、ロシア正教会を保護してもいる。

2007年のロシア正教会と在外ロシア正教会の和解を斡旋し、和解の聖体礼儀に出席もしてスピーチを行った。イスラームに対してはロシア正教会ほどに結び付きはなく、チェチェンではイスラム原理主義武装勢力との対決姿勢を鮮明にしてもいるが、タタールスタンのカザン・クレムリンにおいて巨大なモスクも再建したシャイミーエフのような穏健的な存在とは協力関係を築くなど、硬軟織り交ぜた対応がみられる。

プーチン政権は独裁色が強いとロシア国外のメディアで報じられることがある。ロシア情報公開擁護財団によると、ロシアでは1999年から2006年までに128人のジャーナリストが死亡・もしくは行方不明となっており、プーチン政権がこれらの事件に関わっているのではないかとの疑惑が浮上しており!、・・・国際社会でもチェチェン勢力への人権侵害と相まって非難されている。

圧倒的な支持を背景に自身の強いリーダーシップをもって中央集権化を推進するプーチンの姿勢は権威主義的であると言われ、「ツァーリ」と呼ばれることもあるが、TIME誌に「自由より先に秩序を選択した」とあるように、・・・エリツィン政権で治安が悪化し経済も崩壊したロシア社会に強力な指導力で秩序と安定をもたらしたという見方もできる。プーチン自身は「法の独裁」という言葉を用いて、自らの立場をよく説明する。

《外交》

✦ 『アメリカ合衆国・ヨーロッパ』
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件以来、プーチンはテロとの戦いにおいてアメリカとの協調姿勢を見せ、・・・同時多発テロ後にアメリカ軍がアフガニスタンに侵攻を行う際には、ロシア国内の保守派からの反発があったにもかかわらず、かつてソビエト連邦を構成していた中央アジア諸国にアメリカ軍を駐留させることを認めるなど、アメリカ軍への支援を行った。
しかし次第にプーチンはアメリカの一極支配に抵抗する構えを見せるようになる。2003年に勃発したイラク戦争では、ロシアは戦争に反対してアメリカと距離をおき、・・・戦争慎重派のフランス・ドイツとの連携を強化した。2007年2月にドイツの「ミュンヘン国防政策国際会議」では、アメリカの一極支配体制は受け入れられないだけでなく、その行動は紛争の解決手段にならず、むしろ人道的な悲劇や新たな緊張が生じる原因となっているとして、アメリカの一極支配体制を批判した。

✦ 『アジア太平洋』
日本の北方領土返還要求に対しては、北方領土問題を解決して日露平和条約を締結することに意欲的な姿勢を示しているが、・・・基本的に日ソ共同宣言を根拠に二島返還の立場を取っている。2001年には日本の首相(当時)の森喜朗とともに「イルクーツク声明」を出し、同宣言が北方領土返還交渉の出発点であることを確認したが!・・・2005年の来日時前のロシア国内向けテレビ番組に出演した際には「北方領土の主権が現在ロシアにあることは国際法で確立され、第二次世界大戦の結果であるので、この点については交渉するつもりはない」と発言し、強硬な態度を示している。なお、来日時には日ソ共同宣言に基づき、二島を返還することで日本側を説得しようとした。その後も北方領土問題の解決と平和条約締結に意欲を見せるものの、問題が解決に至らないのは日ソ共同宣言を履行しない日本側の責任であるとしている。

日ソ共同宣言】・・・
                                                   
《日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言》
通称・略称日ソ共同宣言、日ソ国交回復共同宣言
署名1956年10月19日モスクワ
効力発生1956年12月12日
条約番号昭和31年条約第20号
言語日本語およびロシア語
主な内容日本国とソビエト連邦との間の戦争状態の終了宣言、両国間の平和および友好善隣関係の回復宣言



日ソ共同宣言(にっソきょうどうせんげん)は、1956年10月19日日本国ソビエト連邦がモスクワで署名し、国会承認をへて、同年12月12日に発効した外交文書(条約)のこと。これにより両国の国交が回復、関係も正常化したが、国境確定問題は先送りされた。正式には日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言(昭和31年12月12日・条約第20号)と言う。

宣言内容】・・・
 
● 日ソ両国はそれぞれの自衛権を尊重し、相互不干渉を確認する。

● ソ連は日本の国際連合加盟を支持する。

● ソ連は戦争犯罪容疑で有罪を宣告された日本人を釈放し、日本に帰還させる。

● ソ連は日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。

● 日ソ両国は通商関係の交渉を開始する。(同日に通商航海条約を締結)

● 日ソ両国は漁業分野での協力を行う。

● 日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。

(ウイキペデイア引用)

                                      


強かなロシア人、特に元KGBスパイでフィールド活動で鍛えた精神力と人間を見る観察眼が鋭いロシア大統領プーチンとの駆け引き(領土交渉)は日本の政治家の中で対等に渡り合える能力を持つ人物治は安倍首相だけ!と筆者は思うが如何に?。買い被りかも知れませんが。

【安倍晋三首相率いる自民党が参議院選で圧勝し、安倍政権が長期安定化する見通しが強まった。こうした事態の展開を見て、ロシアのプーチン政権はさまざまな手を打ってくるに違いない。だが、その多くは、日本を揺さぶるだけの「見せかけ」に過ぎないだろう。安倍政権は軽々にそれに乗る愚を犯してはならない。状況はいずれ日本側有利に転じるとの大局観に立ち、「お手並み拝見」といった余裕をもって、ロシア側が焦り始めるのを待つべきだろう。プーチン政権が今後、日本に対して採るのは、ほとんど「パカズーハ(見せかけ)」戦術と予想して間違いない】・・・ 北海道大学名誉教授・木村汎氏の【正論】への寄稿文の論旨は全面的には賛同は致し兼ねる。

名も無き社会への影響力などは皆無の一市井人である筆者が社会的に重きの位置を占めている大学名誉教授の寄稿文の論旨に口を挟むのは烏滸がしくもありますが!・・・『プーチン政権が今後、日本にたいして採るのは、殆ど「パカズー(見せかけ)戦術と予想して間違い』と断言出来る根拠は何のか?、釈然としません!。

プーチンの経歴、一度は大統領の座から降りて再度復活する強かさ、表面の冷徹、独裁的な雰囲気とか凡そ懸け離れている感性の細やかさ ★《犬好きで、自身もラブラドール・レトリーバーを飼っている。その愛犬は「コニー」という名前であり、徹夜でお産の世話をしたこともある2012年7月には秋田県より雌の秋田犬1頭が贈られ、自ら「ゆめ(夢)」と名付けている冗談好きで周囲を笑わす過去に発した鋭く正鵠をいている発言の数々を鑑みると、北海道大学名誉教授・木村汎はプーチン・ロシア大統領を単純で張ったりをかます政治家としか看做していない!と筆者は言わざるを得ない。

❈ 「柔道は単なるスポーツではない。柔道は哲学だ」

❈ 「(アメリカは)世界経済の寄生虫とは言わないが、ドル基軸の地位に寄生している」

これ等は含蓄があり、プーチン・ロシア大統領の鋭く正鵠を言葉で推察できるように、木村汎名誉教授の言葉(パカズー)を借りると!・・・プーチン・ロシア大統領は単なるパカズー(みせかけ)で領土問題交渉を展開する政治家プーチンではない!と筆者は断言します。

❈『日本を揺さぶるだけの「見せかけ」に過ぎないだろう。安倍政権は軽々にそれに乗る愚を犯してはならない』・・・これは下手な考え休みにいたり!の趣があり、「棚から牡丹餅(領土問題)」とも思える外交戦略では解決は覚束ないでしょう。


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