2013年7月3日水曜日

日本の年金基金などが米国の発電所を買収。インフラ投資のモデルケースとなるか?

インフラ投資のための共同事業体であるグローバル戦略投資アライアンス(GSIA)は7月2日、米国ミシガン州の火力発電所を総額2000億円で買収すると発表した。GSIAは、カナダの公的年金基金を中心に、日本の企業年金連合会や三菱商事などが参画して組成したインフラ投資の共同事業体。年金基金の投資先拡大のモデルケースとして注目される。
 買収するのは、ミシガン州にある出力163万キロワットの天然ガス火力発電所。主に地域の電力会社とダウケミカル社の化学工場に電力を供給する。ダウ社はシェールガス革命によって米国のエネルギーコストが下がっていることから、米国内での生産を強化している。
 一方、日本の年金基金は国債に偏った運用の問題が指摘されており、運用先の多角化が迫られている。今後は長期的な円安が見込まれるため、海外での運用を想定しないと高い利回りを得られなくなる可能性もある。
 今回のプロジェクトは、シェールガス革命と年金の運用多様化という最近のトレンドを象徴する出来事といえる。
 これまで日本の年金運用は国債に偏ってきた。その背景には、日本国債の安全性という面が大きいが、株式市場の低迷が長期にわたっていることや、日本の株式市場の地位が低下し、市場のボラティリティ(価格の値動きの激しさ)が増大しているといったことも大きく関係している。
 本来であれば、運用先を多角化するのであれば株式比率を高めるのが常識である。日本ほどの経済規模があれば、本来は国内株式市場が有力な投資先となる。だが、日本の場合、経済的地位にふさわしい株式市場が存在していないため、それ以外の選択肢が強く求められる状況となっているのだ。国内の運用環境を考えれば、海外のインフラ投資の拡大は自然の流れといえる。今後はこういった案件が増えてくる可能性が高い。
 だがインフラへの投資は流動性が乏しいことや、事業そのものに対するリスクなど、従来の金融商品にはないリスクも存在している。
 こういった投資先の多角化も重要だが、一方で、日本の株式市場を信頼の足るものにするという地道な取り組みも求められている。国債、株式、インフラとバランスの取れたポートフォリオの構築が理想的な姿である。
                          

筆者考:
これは非常に興味深い動きですね!・・・年金基金運用は世界各国でも重要であり、運用を間違えれば莫大な損失を蒙るので各国とも投資先は慎重に選択している。
最大の問題は年金を如何に安全な投資をするかであり・・・投資に際しては複数の優良運用マネージャーへ投資委託/共同投資をする手法をとっている。

✦【GSIAは、カナダの公的年金基金を中心に、日本の企業年金連合会や三菱商事などが参画して組成したインフラ投資の共同事業体】が今回米国の発電所の買収は今後の日本国の公的年金基金運用に大きく影響する事が想定されて、ある意味では画期的!と言える。

✦カナダ公的年金積立金運用"CPPIB"

CPPIB(Canada Pension Plan Investment Board)・・・1600億カナダドル(約12兆8000億円)の資産を運用する巨大公的年金運用機関。1997年の設立当初は運用資産は全て国債へ投資していたが、基金の存続可能な持続的な目標リターンの達成と資産の分散化を図るために投資対象の資産クラス、投資対象国を大幅に拡大。

2012年現在の資産クラス別の投資比率は、上場株式が34.1%、債券などの確定利付資産が33.2%、インフレ感応資産(不動産やインフラ)が16.4%、プライベートエクイティが16.3%
最も投資アロケーションの多い上場株式投資では実に世界中の3000近い企業へ投資している。

CPPIBの運用手法
CPPIBは基金の恒久的な存続に必要な長期の年間リターンを定め、そのターゲットとなるリターンに沿って運用戦略を決定する。現在の2020年までの目標リターンは4.1%ながら、プライベートエクイティやインフレ感応資産(不動産やインフラ)などの投資先からの好調なリターンから、2010年は+14.9%、2011年は+11.9%、2012年は+6.6%と目標を大幅に上回る運用成績を達成。

投資に際しては複数の優良運用マネージャーへ投資委託/共同投資をする手法をとっている。

プライベートエクイティの投資事例としては運用会社と共同投資したSkypeが有名で、CPPIBは後にSkypeの保有持ち分をMicrosoftへ売却し、19億ドルの取得価格に対して2年間で350%近いプレミアムを上乗せした価格で売却した事例が挙げられる。

他に個人年金(RRSP=リタイァド・レジスタード・セービング・プラン)があるが、此れは年間の収入応じて投資(株、国債)すると投資額が非課税となり税の還付を受ける。
2008年の金融危機後の景気後退で株が暴落で金融資産が大幅に減少して現在は投資に二の足を踏む者が多く、ここ数年間の株価上昇の恩恵からは蚊帳の外で臍を噛んでいる者が数多散見できる。

先進諸国の年金基金は・・・


アメリカ:
カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)
 フロリダ州管理理事会(SBAF)
 ニューヨーク州教職員退職年金基金(NYSTRS) 
 ニューヨーク州職員退職年金基金(NYCRF)

カナダ:
 カナダ年金制度投資委員会(CPPIB)
 オンタリオ州教員年金(OTPP)
 オンタリオ州地方公務員年金(OMERS)

 欧 州 

オランダ:
APG 
PGGM

イギリス:
ハーミーズ・ファンド・マネジャーズ(Hermes)

ノルウェー:
ノルウェー銀行投資マネジメント(NBIM)
 ノルウェー銀行投資マネジメント(NBIM)

以上が挙げられるが何れも積極的な基金運用を取り入れている。


日本国の公的年金基金の運用先は・・・


金融機関 国内債券 外国債券 国内株 外国株 その他
国民年金&厚生年金【114兆円】
(GPIF) 67% 8% 11% 9% REITゼロ
現金預金5%

となっており、国内債権に集中する歪な形に成っており、アベノミクスで「インフレ・ターゲット」
が2%の目標であるが、インフレが進むと、調整が利かなく恐れあり!・・・詰まり国債の下落、損失の可能性に面している。

今回の『日本の年金基金などが米国の発電所を買収』は淀んでいる公的年金運用に風穴を開け通風が良くなり好結果(経済の変化で国債の価値が下がり年金基金に損失が生じるのを避ける事が出来る、今後の展開を注視する必要があるでしょう。


【参考文書】

カナダ公的年金投資運用”CPPIB”

http://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/cppib-alternative-investment/

北米および欧州の年金に関する現地調査報告 


世界の年金資産の運用ポートフォリオ(資産配分)






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