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【ラスベガス=奥平和行】ソニーグループは4日、電気自動車(EV)事業を担当する新会社を2022年春に設立すると発表した。20年に公開した試作車の公道試験などを通じて蓄えた知見を活用し、EVの事業化に向けた本格的な検討に入る。脱炭素の流れを背景に世界的にEVへの関心が高まるなか、異業種からの参入が加速する契機となる可能性がある。
米ラスベガスで開催中のテクノロジー見本市「CES」の会場で、吉田憲一郎社長が記者会見して発表した。新会社の名称は「ソニーモビリティ」で、本社は日本に置く見通し。ソニーグループ幹部は4日、日本経済新聞の取材に対して「事業化の本格検討に入る」と説明した。
ソニー(現ソニーグループ)は20年のCESで自動運転機能を備えたEVの試作車を公開し、欧州などで公道試験を重ねてきた。従来は自動車は高い安全性が求められることなどを理由に事業化には慎重な姿勢を示してきた。会見で吉田社長は「試作車への反響が大きかった」ことなどを新会社を設立する理由として挙げた。
あわせて多目的スポーツ車(SUV)型の新たな試作車を公開した。20年に公開した試作車はセダン型で、新たなSUVはソニーグループのEVとして2モデル目となる。同社が得意とする画像処理半導体を含む40のセンサー類を車内外に搭載し、安全に配慮したという。音響技術などを生かしたエンターテインメント機能も高めた。
ソニーグループがEV事業で一歩踏み込む背景には世界的なEVの需要の高まりがある。この分野で先行した米テスラの世界販売台数は21年に100万台に迫り、独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)といった欧米メーカーも一気にアクセルを踏み込んだ。日本勢でもトヨタ自動車が12月、高級車ブランド「レクサス」で全車をEV化することを決めるなど、事業強化の方針を公表する動きが相次いでいる。
EVでは従来、テスラが先行し、既存の自動車大手やスタートアップ企業が追い上げる構図だった。ソニーグループなどの他の分野で実績を積んだ企業は「第三極」となる。米アップルもEVへの参入が再三にわたって取り沙汰されており、音響機器やスマートフォンなどで競った日米の有力企業が競う新たな領域となる可能性もある。
EVを巡る競争が激しくなっているが、吉田社長は記者会見で「センサーやクラウド、5G、エンターテインメント技術、コンテンツを組み合わせる必要がある」と指摘した。ソニーグループはこうした技術を一社で手がけており、「モビリティーを再定義する好位置に付けている」と強調した。
5日の東京株式市場でソニーグループ株は午前中に一時、前日比700円(5%)高の1万5670円まで上昇した。「EVに参入することでソニーグループの半導体事業の業績拡大も期待できる」(auカブコム証券の山田勉マーケットアナリスト)との見方が広がった。「日本株の中ではトヨタ自動車に次いでソニーグループがITやEVで稼ぐ成長産業とみられ外国人投資家の買いを集めている」(国内証券)との見方もあるが、一段高に向けては「EVの収益貢献を確認していく必要がある」(楽天証券経済研究所の窪田真之氏)と慎重な声も出ている。
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