2013年9月17日火曜日

【防衛オフレコ放談】自衛隊で内紛勃発 対中有事めぐり四分五裂


 富士総合火力演習で実弾射撃訓練をする陸上自衛隊の10式戦車=8月25日、静岡県の東富士演習場【拡大】
 年末に予定する「防衛計画の大綱(防衛大綱)」改定に向け、政府の検討作業が大詰めを迎えようとしている。4度目の改定となる今回は「戦闘モード」を強く意識した内容となる見込みで、検討に用いた手法では画期的な転換を図った。

 ところが、ここにきて不穏な兆候が出てきた。陸海空3自衛隊の制服組(自衛官)で「内紛」が勃発し、背広組(内局官僚)も制服組に横やりを入れる。陸自にとっては天敵といえる政治学者の「口先介入」の恐れもあり、防衛大綱改定をめぐり四分五裂となりかねない様相だ。
 ■初めて採用された「統合」有事シナリオ

 防衛大綱はおおむね10年先を見据えた安保政策と防衛力整備の基本方針。防衛省は7月、省内で検討してきた改定案に関する中間報告を公表した。

 中間報告の中に注目すべきキーワードがある。

 「統合運用を踏まえた能力評価」

 「統合運用」は3自衛隊を一体的に運用することを指し、「能力評価」は3自衛隊の総合的な戦闘能力に対する評価だ。

 つまり中間報告をまとめるにあたり、迫り来る脅威に3自衛隊はどこまで対処可能で、対処できないとすれば何が足りないのかを検証したわけだ。

 至極当然の作業のようでいて、「画期的な転換だ」(海自幹部)と指摘される。

 これまで大綱改定にあたり陸海空はそれぞれバラバラの作戦計画をつくり、それに基づき装備を導入していた。自ずとシナリオは我田引水になり、導入して無駄に終わった装備も少なくない。

 今回はそれを抜本的に改め、制服組として3自衛隊共通の有事シナリオを初めて策定。そこから必要な装備体系と運用指針を導き出すことにした。
■海・空優先で排除された陸

 有事シナリオは、中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)など南西方面の離島への侵攻と、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃の2通りある。

 これはいま最も起き得る危険性の高いシナリオであることは間違いない。中国の公船や航空機が日本の領海と領空に侵入し、北朝鮮も昨年12月の長距離弾道ミサイル発射で能力を著しく向上させたことを実証したからだ。

 仮に中国軍が尖閣を奪取しようとすれば、艦艇や戦闘機など海・空戦力の展開が中心になる。ただし最終段階では上陸部隊として空挺部隊や水陸両用戦車も投入してくるとみられる。

 これに対応するためには海自と空自が中心になるのは当然だ。シナリオもそうした内容だったが、陸自には強い不満がくすぶる。

 「あまりに陸自の出番が少ない」

 海・空自には、中国側の増援部隊の艦艇や航空機が展開してくるのを海・空戦力で封じ、先に投入された艦艇や上陸部隊を孤立させられると主張する声が多かった。「離島を奪還するために陸自部隊が上陸するような作戦は想定する必要がない」と言い放つ幹部もいたという。

 北朝鮮の弾道ミサイル攻撃への対応にも陸自は納得していない。

 北朝鮮がミサイルを日本に着弾させるようなケースでは、同時に原子力発電所のようなインフラ施設にテロ攻撃を仕掛けてくる「複合事態」も想定される。だが、有事シナリオはミサイル対処に限定された。

 シナリオは陸自がテロリストを掃討する作戦に踏み込まず、「陸自排除」が貫かれた、というのが陸自の言い分だ。
 ■「戦略」つぶしにかかる背広組

 もっとも、海・空自には陸自に対し、「海・空戦力が中心になる脅威と対処のありようを直視し、シナリオと作戦構想に歩み寄るべきだ」(空自幹部)との不満もある。

 防衛大綱の改定案がまとまり、閣議決定されるのは12月になる見通し。今後3カ月、陸自の巻き返しと海・空自の抵抗という構図の攻防が激化するはずだ。

 さらに厄介なことに、制服組同士の内紛に触発されたのか、背広組も口を挟んできた。

 実は、制服組が統合有事シナリオを作成したのは、制服組が主導する「統合防衛戦略」の策定につなげるためだった。統合防衛戦略を米国の「国家軍事戦略」に相当する戦略文書と位置づける狙いがある。

 しかし、背広組が待ったをかけた。統合防衛戦略の策定を認めれば、制服組の権限拡大につながると嫌がり、潰しにかかっているというのだ。

 こうした防衛省内の内ゲバにとどまらず、場外乱闘が勃発する恐れもある。

 ■門外漢の政治学者も参戦か

 安倍晋三首相は外交・防衛・経済の3分野を軸にした包括戦略となる「国家安全保障戦略」を初めて策定する方針を固めている。それに向け、盛り込むべき戦略の内容を議論する有識者会議を設置、座長には北岡伸一国際大学長を充てた。

 北岡氏の名前にアレルギー反応を示す陸自幹部は多い。

 平成22年、民主党政権が初めて防衛大綱を策定した際、「政治主導」を掲げながら自前で大綱案をまとめあげる能力がなかった。そこですがりついたのが北岡氏で、「関係閣僚協議」という重い場に極秘に同席させた。

 陸自は、北岡氏が関係閣僚協議に出席し、防衛大綱で定める防衛力のあり方に口出しすることに激怒した。その頃、北岡氏が陸自の人員削減を唱える論文を発表していたからだ。

 「軍事が専門でもない政治学者に自衛隊の編成・装備にまで意見を求めるのであれば問題だ」

 当時、陸自幹部は口をそろえて批判していた。

 年内にも策定される国家安保戦略は防衛大綱より上位に位置づけられる戦略文書で、防衛大綱は安保戦略の「縛り」を受けることも避けられない。

 国家安保戦略に関する有識者会議座長というポストを得た北岡氏が、またぞろ自衛隊の編成・装備に注文をつけない保証もない。

 背広組も「軍事の門外漢」と断じる北岡氏の発言力が防衛大綱にも必要以上に反映されるようだと、せっかくの有事シナリオも浮かばれない。(半沢尚久)
ZakZak (2013.09.17)
                                                                                                                                                 
筆者考:
✦【 これまで大綱改定にあたり陸海空はそれぞれバラバラの作戦計画をつくり、それに基づき装備を導入していた。自ずとシナリオは我田引水になり、導入して無駄に終わった装備も少なくない】・・・これは大東亜戦争前の陸海軍の軋轢が髣髴され、戦後も此の悪弊が残っていたとは驚きです。
戦前の陸軍/海軍の軋轢!・・・
竹槍事件・・・第二次世界大戦中の1944年(昭和19年)2月23日付け『毎日新聞』第一面に掲載された戦局解説記事が原因でおきた言論弾圧事件・・・此の事件の背景は海軍が海洋航空力を増強するため陸軍より多くの軍需物資を求めても、陸軍はこれに応じようとはしないで、半々にせよとして譲らない、海軍の飛行機工場の技師を召集してしまうなど、航空機や軍需物資の調達配分をめぐる陸軍と海軍の間の深刻な対立
✦日本軍政時代のインドネシア!・・・石油が欲しかった日本軍は海軍も陸軍もそれぞれが分割統治し、海軍はボルネオの油田を、陸軍はスこれマトラの油田を保有した。
✦日本では陸軍と海軍が双方で航空隊を有し、飛行機の操作体系や使う用語まで全て違っていた!・・・ドイツから陸軍と海軍が同じエンジンのライセンス生産権を二重に買い、陸軍と海軍で別々に戦闘機用機銃 (開発に高度な技術を要する) を開発・生産し、海軍が使う20ミリ機銃を陸軍機が一切使えないなど、陸軍と海軍が全く別の航空兵力を整備し、予算と資源の分捕り合戦を行うことの弊害が生じた。  
日本陸軍が「隼」に装備していた12.7ミリ機銃を、日本海軍の零戦に、既に時代遅れの7.7ミリ機銃の代わりに装備していれば、零戦の戦闘力は上がり、!・・・逆に、「隼」に海軍の20ミリ機銃を装備すれば、陸軍戦闘機の戦闘力も向上。
陸軍の飛行機は、早い時期から、パイロットの命を守る防弾板や、燃料タンクの防弾ゴムを装備しており、海軍もこれに倣うべきだったが、頑迷な大臣を筆頭に将校達に依って生命線とも言える陸海の融和は円滑に図れず致命的な欠陥となった。
空母で使う艦上機以外の、陸上基地から作戦する飛行機は陸軍・海軍共通にすべきだったが!、・・・実際は最後まで「陸軍と海軍の飛行機は全く別」でした。例外として、陸軍の偵察機が海軍に提供されただけ。
これ等の戦前の悪弊が再現されていた自衛隊の組織が、漸く安倍政権に依って是正されようとして、「防衛計画の大綱(防衛大綱)」改定が進められて大詰めを迎えている事は喜ばしい限りですが、例によって危惧されていたシビリアン・コントーロ(文民統制)の欠陥が浮き彫りにされて来たようで、是は不吉な前兆!と筆者は捉えています。
日本は文民統制を歪んで導入(日本人の思考法に合わせず、直訳して)して仕舞い!・・・背広組が必要以上に権限を持ち、ともすれば制服組を見下す風潮がある。つまり背広組は真の軍事的な知識も有していないにも関わらず唯我独尊の世界に身を置き専門家の意見を聞こうとはしない。
【安倍首相の《「防衛計画の大綱(防衛大綱)」改定》に対する意気込みはよし!とすべきですが!・・・ ■門外漢の政治学者も参戦か】安倍晋三首相は外交・防衛・経済の3分野を軸にした包括戦略となる「国家安全保障戦略」を初めて策定する方針を固めている。それに向け、盛り込むべき戦略の内容を議論する有識者会議を設置、座長には北岡伸一国際大学長を充てた。
座長に自衛隊内で人望もない北岡伸一国際大学長を充てた!・・・人望などがある筈がありませんね!、然も北岡氏が陸自の人員削減を唱える論文を発表していたのでは陸自が反発するのは当然です。
確かに現今は兵器の進歩は瞠目するほどで戦術、戦略は大幅に変わり以前ほど陸上戦は必要とされずにミサイル、航空機、イージス艦、潜水艦、空母などの電子技術を駆使した戦いが主となっているは確かですが、其れでもアフガニスタンやイラクの戦闘では時代遅れとされていた戦車が陸上の戦闘では大きな戦闘力を発揮して見直されました。海兵隊はそれなりの役割があり、最終的な地上戦は矢張り陸軍が決め手となります。
離島(尖閣を想定)奪還は当初は陸自の出番はなく[空/海自」の機動力に託すは当然ですが、・・・離島奪還後は矢張り陸自となるでしょう。勿論制海、制空権は確保しなければなりませんが。
レーダーで捕捉困難な小型軍艇やステルス艦などで兵員を運び突然上陸、侵攻されても水際で撃退するのは駐屯している陸自です。領土が侵略の危機に立たされれば正当防衛(自衛権発動で他国は日本国を非難はできず)が成立します。
離島に敵国の兵員が上陸、侵略され奪還後ははれて自衛隊を離島の防人として堂々と駐屯させ!・・・さらに防衛基地建設は可能となり、陸自は必要となる。
おそらく、有識者会議の座長の北岡伸一国際大学長は近代戦は陸自などは大きな戦力にはならず、科学の粋を集めた精強、精緻な武器を持つ海自・空自ばかりに目がいっているのでしょう。背広組の致命的な欠点!と筆者は言わざるを得ません。
支那海軍の太平洋進出の野望が年々膨れ上がり押さえが効かなくなりつつ現況で!・・・自衛隊の内紛は愚かであり、絶対に避けなければなりません。安倍首相は、事と次第に依っては北岡伸一国際大学長は外す事を考慮に入れなけらばならない事態がくるかも知れません。
安倍首相の英断に期待した処です。