2013年9月1日日曜日

完全養殖クロマグロ量産 三菱商事系、年1万匹超


三菱商事グループでマグロ流通最大手の東洋冷蔵(東京・江東)は人工ふ化した稚魚を育てた養殖クロマグロの出荷を9月から始める。2014年の出荷は1万数千匹(400~500トン)の見込みで、人工ふ化稚魚を使ったクロマグロ養殖としては最大規模になる。天然資源を減らさない「完全養殖マグロ」としてブランドの確立を狙う。
 主に近畿大学が人工ふ化させた生後30日ほどの稚魚を仕入れ、和歌山県串本町と長崎県五島市の養殖場で3~4年かけて30キロ程度に育てる。ブランド名は「ツナプリンセス」。味も通常の養殖物と比べて遜色ないという。卸売市場は通さず、小売店や外食チェーンに生鮮で直接販売する。将来は米国などへの輸出も視野に入れる。
 クロマグロ養殖は「ヨコワ」と呼ばれる天然の幼魚を使うのが主流。天然の幼魚を使う養殖クロマグロの卸価格は1キロ3千円程度。人工ふ化した稚魚を使うと養殖期間が1年近く長くなり、生存率も下がるため、コストは3割程度高くなるとされる。東洋冷蔵は今後、飼育方法を工夫することで歩留まりを高めコストを抑制したい考えだ。
 日本近海を含む北太平洋のクロマグロ資源は過去最低に近い水準まで減っている。養殖に使うヨコワの漁獲も減少の一因とみられ、水産庁では昨年、ヨコワの漁獲を伴う養殖の拡大を禁止した。人工ふ化の稚魚からの養殖は規制の対象外で、今後も事業を拡大できる。
 人工ふ化の稚魚を使った養殖物は近大が育てた「近大マグロ」などが流通していたが、全体で年間1万匹前後にとどまっていた。1社単独で1万匹以上という東洋冷蔵の出荷が始まることで流通量が2倍以上になる。日本のクロマグロ市場は年間約4万トン。うち国内の養殖物が9千トン超を占める。(2013/8/30 2:03)
                                                      
高級魚クロマグロは身近な食材になるか 水槽で産卵、研究スタート 

独立行政法人・水産総合研究センター西海区水産研究所が長崎市内に完成させた高級魚のクロマグロ用陸上飼育水槽の本格稼働が始まった。マグロを成熟させて大量の受精卵を生産する技術を確立するのが目的だ。6月に飼育し始めた未成熟なマグロは2年後の産卵を見込む。天然のクロマグロの資源不足が懸念される中、世界で初めて稼働させた産卵施設に注目が集まっている。
長崎で稼働したクロマグロの陸上採卵施設。4年後に約10万匹の幼魚を供給できる技術の確立を目指す
長崎で稼働したクロマグロの陸上採卵施設。4年後に約10万匹の幼魚を供給できる技術の確立を目指す
 「予想より早く人工配合飼料に切り替えられた。食べる量も増えており順調だ」。水産総合研究センター西海区水産研究所の虫明敬一・まぐろ増養殖研究センター長はこう話す。6月に2つの陸上水槽で飼育を始めたのは、鹿児島県の奄美大島沖の海上いけすで養殖していたクロマグロ114匹。いずれも生後2年で、平均の体長約1メートル、体重は15キログラムだ。長崎まで船で輸送した。8月上旬までに5匹減ったものの残りは元気に水槽内を泳いでいる。搬入当初は落ち着かず、水槽壁に激突するマグロもいたが、いまは上手によけながらゆったりと泳ぐ。当初は食べやすいサバの切り身など生のエサを使っていたが、7月半ばから栄養価を一定に保てる人工配合飼料に切り替えた。
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 世界初のクロマグロ用水槽は数多くの工夫を施している。2つある水槽はいずれも直径20メートル、深さ6メートルの円柱形のコンクリート製で、1880トンの海水が入る。水温や日照時間を制御でき、成熟や産卵に適した条件を人工的に作れる。照明は発光ダイオード(LED)を使い、昼夜も再現可能だ。夜はゆるやかに照度を落とし、月明かりの2倍程度にするという。水槽内の海水は毎日約10%を入れ替えるが、残りは循環・ろ過している。「掛け流し水槽に比べて運用コストが半減する」(虫明センター長)。海水はすべて紫外線で殺菌処理し、感染症の予防対策も講じる。
水中に設置したカメラで24時間観察できる。拡大なども可能で、謎が多いクロマグロの行動や成熟・産卵行動なども詳細に記録できる可能性が高い。メスをオスが追いかけて、産んだ卵にオスが精子をかけてできた受精卵が浮いたところを集める計画だ。
水槽内を24時間監視するカメラモニターの前で説明する虫明敬一・西海区水産研究所まぐろ増養殖研究センター長
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水槽内を24時間監視するカメラモニターの前で説明する虫明敬一・西海区水産研究所まぐろ増養殖研究センター長
 陸上の水槽がなぜ必要なのか。クロマグロは現在、西日本の沿岸の海面いけすなどで養殖されている。ヨコワと呼ぶ天然の幼魚を捕獲して育てる手法がほとんどだ。日本で必要なヨコワは年間40万~50万匹といわれている。養殖施設の急増からヨコワの減少が懸念されており、人工的なヨコワ生産に注目が集まっている。
 クロマグロは気性が荒く、飼育しにくいことで有名。天然の幼魚に頼らず卵から育てる完全養殖技術は近畿大学がすでに実現しているが、稚魚が共食いしたり、いけすの網に衝突したりする問題があり、ヨコワに育つ確率が低い。海面いけすで養殖用の受精卵をとろうと長年試みているが、水温や台風などの自然条件に左右されやすく、産卵数が安定しないのが悩みの種だった。近大の熊井英水教授は「安定した数の受精卵を確保するには人工的に環境を制御できる陸上水槽が不可欠だ」と説明する。
 クロマグロはまだ謎が多い。天然では5歳で成熟するといわれるが、3歳や4歳で成熟するものも見つかっており、どんな条件がそろえば成熟するのかわかっていない。虫明センター長らは、当面は冬場の海水温をエサが食べやすいセ氏16度以上とし、夏場は同28度以下に抑える方針。日照なども四季に合わせて調整する。2年後から受精卵がとれれば、鹿児島県の陸上水槽に飛行機で輸送。約6センチメートルの稚魚に成長させた後、海上のいけすで育てる計画だ。4年後にはヨコワを約10万匹供給できる技術の確立を目指し、クロマグロの完全養殖の普及に弾みを付けたい考えだ。天然資源の枯渇を防ぎながら、高級魚を身近な食材にできる日もそう遠くないかもしれない。(西村絵)
 
                                                          
筆者考:
『独立行政法人・水産総合研究センター西海区水産研究所が長崎市内に完成させた高級魚のクロマグロ用陸上飼育水槽の本格稼働が始まった』・・・日本の科学の粋を集めて完成させた 世界初のクロマグロ用水槽は数多くの工夫を施している。
これとは別に!,研究されていたクロマグロの完全養殖・・・『近大水産養殖種苗センター大島事業場(和歌山県串本町)』では1970年に着手したものの、完全養殖までの道は険しかった大きな体に似合わずデリケートなマグロは、人間が触ったり、いけすの網にこすれたりしただけでも皮膚がただれて死んでしまう天然の幼魚をいけすに収めるだけでも数年を要した1980~90年代にかけては10年以上にわたって卵が採取できず、途方に暮れたやっとのことで人工ふ化までこぎ着けると、稚魚の共食いに悩まされた等々の困難の連続。
■苦節32年 試行錯誤が実を結び、・・・完全養殖を達成したのは32年目の2002年。以来、成功率の向上やエサの改良による肉質の改善も重ね、産業化への道筋をつけた。

✦【近大の完全養殖マグロ、大阪に店舗 人気の味は 】・・・

完全養殖マグロには近大の「卒業証書」がついている!・・・粋な計らいで笑みが零れます。

2013年4月下旬、大阪・梅田にオープンした複合施設「グランフロント大阪」。連日盛況のなか、ひときわ注目を浴びているのが産官学の技術交流拠点「ナレッジキャピタル」に入居する養殖魚専門のアンテナショップ、「近畿大学水産研究所」だ。

30年以上の試行錯誤を経て近大が開発した完全養殖のクロマグロが食べられる初めての店舗である。評価は?・・・開店15分で売り切れ 「夢のマグロ」に長蛇の列「赤身3割・中トロ5割・大トロ2割」で味は好評で、余程の通でない限り、と養殖クロマグロ(人口孵化されたものではない天然幼魚)や天然クロマグロとの違いはわからぬ程だそうです。 

                      


アンテナショップでの完全養殖クロマグロ!・・・美味しそうです!。

筆者も機会があったら、是非ともアンテナ・ショップに出向いて、舌鼓を打ちたいものです!。


   年々漁獲量が減少し、此の侭では!、・・・クロマグロに限らず水産資源が枯渇する恐れは非常に高く、他国に先駆けて日本では「産・官・民」が協力して数十年前から完全養殖の研究に着手している。

新幹線並の超特急と言えず亀の歩みの如きですが、着々とゴールに向かって進んでいるは嬉しい限りです。

追い風は安倍第二次内閣の誕生で!、・・・国賊・売国前民主党政権が採った仕分けを恐れることなく研究を持続して必要な予算を組める事です。

加えて食の安全保障も、国の安全保障と同列に語れるものであり、更にアベニミクスの三本の矢のひとつの成長戦略の一連となりうるものと筆者は考察しています。
               
参考記事