安倍晋三内閣で経済再生担当、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)担当の甘利明です。お招き頂きありがとうございます。
先週にブルネイでTPP閣僚会合がありました。「どうして安倍内閣がTPPに前のめりになるのか」と言う方もいるが、TPPはまったく新しい21世紀型の通商貿易の広範な国際ルールになっていくと予測されるんです。従来の経済連携は市場アクセス、関税撤廃が中心でしたが、TPPはそれ以外のルールが多く、それがこれからの国際ルールになっていきそうです。本当はWTOが新しいルールを作る方がよいかもしれませんが、WTOはまったく動かない状況なので、TPPのルールが、他の経済連携協定のたたき台になるという道筋がはっきりしてきた。
アジア太平洋全域のFTAAP(エフタープ)のルールの元になり、米国とEU、日本とEUもそれぞれ経済連携協定の作業を始めている。ここで日本が創設メンバーとしてルール化に関与していないと大きな後れを取ることになります。
日本は最後のメンバー、12番目のメンバーとして参加しましたが、ブルネイの閣僚会合では「日本はやはりすごい国だ」と評価されていると感じました。
TPPは参加するまで情報アクセスは遮断されており、参加して「一切情報は漏らしません」という秘密保持誓約書にサインして初めて情報に接触できる。にもかかわらず、あっという間に情報格差を埋めて同列に立ち位置を取り、会議をリードし始めました。
ブルネイ会合では「高い野心」と「バランスの良さ」の2つが入っている。バランスとは何か。米国を中心にした先進国とアジアの国とは落差があるが、すべて先進国に(条件を)そろえると摩擦が起きる。では途上国におもんぱかると野心は低くなる。「野心は高く、バランスはよく」とは、各国事情に配慮しながら各国の最大公約数をどこまで高められるかという交渉なんです。
米国に合わせて野心を高くすると他国から不満が出るが、アジアの大国である日本が入ることにより、アジアの国々と先進国をつなぎ、バランスを取りながら交渉できる。つまり各国がどうしても譲れない「レッドライン」を認識しつつ、できるだけよいものにするという一見矛盾する2つをつなぐことができる。それで日本の参加は評価され、歓迎されているんです。
私は、米通商代表部(USTR)のフロマン代表と日本で会談した後、現地に行ったが、初日の会合で「このままではまとまらない」と感じた。各国の交渉官がレッドラインを一つも譲らないので進むわけがないんです。だから、私は閣僚のオフ会合で「これじゃあ絶対に進みません。閣僚の皆さんは現場の声を聞いたことがありますか。われわれの思いと現場の動きが乖離している。まず閣僚間でレッドラインをどこまで縮められるかを話し合った上で首席交渉官に権限を与えないと現場は動けません」と話したんです。それで少しずつ氷が溶けて動き出したといえます。
日本国内で関心が高いのは市場アクセスですが、他の国が「ここは」と思っているのは知的財産や競争ルールなんです。それに環境問題。つまり環境保全と貿易ルールの整合性です。それから原産地規則も関心が高い。政府調達、金融サービス、投資、投資内サービス-などルールを決めることはたくさんあります。
ブルネイ会合で温度差はあれ動き出した。オバマ米大統領は年内妥結に非常に強い思いがある。交渉は長びくほどまとまりにくくなるので、10月のバリでのAPEC首脳会議の際、TPP首脳会議で大筋合意し、年内妥結というスケジュールを各国で共有している。その前に9月18日から21日の日程でワシントンでの首席交渉官会合を調整中です。合わせて閣僚会合が必要になるかならないか。閣僚から事務方へ、事務方から閣僚へというキャッチボールがどのくらい進むかによるでしょう。
市場アクセスは、各国とリクエスト・オファーのキャッチボールをしながら決めていくことになる。投資分野と金融サービス、原産地規則では比較的進展があったが、知的財産、競争ルール、そして環境と貿易の整合性の問題は難航が予想されます。バリでの大筋合意が節目になるでしょう。
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秋の大きなイベントとして首相が政府として消費税の判断をします。おそらく10月上旬に判断されると思います。
先週、60人の識者に集まってもらい集中点検会合をやりました。かなりの方が「法律通りやるべきだ」という考えでした。「法律通りにやるべきでない」という方でも「消費税率の引き上げそのものが必要ない」という方はほとんどいませんでした。
安倍内閣の至上命題はデフレ脱却です。アベノミクスが従来の経済対策と違うのは、大胆な金融政策、財政出動政策、そして成長戦略の3つを組み合わせていることです。デフレマインドを払拭しないと消費と投資が起きず、いろんなことをやっても一過性で終わり、民間経済が動き出さないことに注目したんです。
物価が下がっても今まで以上の利潤と雇用が確保できるならよいが、生産性が変わらずに雇用、賃金と利潤を犠牲にしながら物価が下がるのはおかしい。わずかに物価が上がり「必要なものは今買った方が得なんだ」というマインドにしていけば、消費と生産、賃金が伸びるプラスのスパイラルに入る。物価は少し上がるが、賃金はそれを超えて上がり、消費も増え、生産が増えるんです。
金融緩和により、株は上がって円は安くなり、輸出企業は黒字に変わりました。海外からは「円安誘導のためか」と言われましたが、これは日本経済再生のための副作用であって円安誘導が目的ではない。
日本経済回復のパターンは「輸出が回復して景気が良くなる」でしたが、今回の景気回復は消費が牽引しています。所定内賃金も所定外賃金も上がっている。加えて資産効果があるのでモノが売れています。ここからさらに民間投資を拡大するのが大事なんです。デフレを脱却し、民間投資が起きる好循環にしていく中で消費税がどう影響するか。10月1日には日銀の短観も出ますので首相は各種指標をみながら適切な判断をすることになります。
集中点検会合では「予定通り増税すべきだ」という人も「経済の底上げをして目指すべき成長の対策はきちんとやるべきだ」という意見が非常に多かった。
でも財務省は増税の反動分の埋め戻しだけちょろちょろやって、できるだけ財政出動しないで済ませたいという思惑が見え見えなんです。ここが大事な攻防戦になろうかと思います。経済の足腰を強くしていくことを十二分にやらないといけませんので、私は引くつもりはありません。
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そういう点を含めてアベノミクスの秋の陣を進めていくわけです。臨時国会は10月中旬からになるでしょう。首相は「実りのあるものにしてほしい」と言っています。
国家戦略特区も加速させます。今までの特区は地域振興ですが、国際戦略特区は日本の牽引特区です。まずは総合特区「メディコンバレー」。医薬品・医療機器を世界の3本の指にしようとしているわけです。NIH(米国立衛生研究所)のように薬の基礎研究から創薬まで一手にやる日本版「NIH」も創設します。
設備投資をリーマンショック前の70兆円まで2年以内に回復させるため、設備投資減税なども大胆にやります。
とにかくデフレを脱却して成長路線に乗せていく。「JAPAN is BACK」。かつて世界経済の牽引役だった日本が再び牽引役に復帰する。そんな思いを込めています。ご静聴ありがとうごいました。
2013年9月3日(火)08:42 配信
筆者考:
民主党政権からの遺産(民主党政権時代に菅直人、野田佳彦両首相が交渉参加を模索したが、与党内の反発で決断できなかった)であるTPP!・・・安倍政権が引き継ぎ、日本政府が参加意向を表明した時点から、政府の詳細に亘る説明不足(参加が決定されるまで不可、説明できぬ)が相俟って憶測が一人歩きして議論沸騰していたずらに混乱を招き国論が真っ二つ!になって現在に至っている。
TPPは民主党政権時代から国民の耳目を多大に集め!・・・メリット、デメリット、問題点を識者の方々は認識している!と思いますが、記憶を新たにお浚いの意味で以下に記します。
TPPのメリット
✦関税の撤廃により貿易の自由化が進み日本製品の輸出額が増大する。
✦整備・貿易障壁の撤廃により、大手製造業企業にとっては企業内貿易が効率化し、利益が増える。
✦グローバル化を加速させることにより、GDPが10年間で2.7兆円増加すると見積もられている。
TPPのデメリット
✦海外の安価な商品が流入することによってデフレを引き起こす可能性がある。
✦関税の撤廃により米国などから安い農作物(特に米)が流入し、日本の農業に大き なダメージを与える。✦食品添加物・遺伝子組み換え食品・残留農薬などの規制緩和により、食の安全が脅かされる。
✦医療保険の自由化・混合診療の解禁により、国保制度の圧迫や医療格差が広がると 危惧されている
TPPの最大の懸念!!!・・・
ISDS条項(ISD条項)
海外起業を保護するために内国民待遇が適用され!・・・これにより当該企業・投資家が損失・不利益を被った場合、国内法を無視して世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターに提訴することが可能。結果、日本政府や自治体は法外な賠償金を請求されるか、亦は不利益となる法律改正を迫られる可能性がある。
ラチェット規定
一度自由化・規制緩和された条件は、当該国の不都合・不利益に関わらず取り消すことができない。
TPP離脱に対する訴訟リスク
TPPのルール上、離脱はいつでも可能とされるが、実際上は海外企業からの莫大な損害賠償請求が予想されTPP離脱は極めて困難と考えられる。
✦【甘利明経済再生担当相「TPPは21世紀型ルール。関与しないと後れを取る」】・・・21世紀型のルール!、これはまた大仰な!。
甘利明経済再生担当相の言には納得いかぬ点がありましたので、少々、突っ込みを入れてみました。独断的なきらいがありますが、ご容赦ください!
この言は『FTAAP(エフタープ)の件で昨年(11月11日の衆議院予算委員で野田首相が当時野党だった自民党 佐藤ゆかり議員に罵られた《TPPはFTAAPへの道筋をつくっていく/TPPはFTAAPへの一里塚!》のコピーです。民主党政権と同じ事を言っている!。
ならば、TPPではなくて初めからFATTに照準を合わせるべきでしょう。なんや、かんやと理屈をつけてTPPに前のめりになっているは呆れるばかりです。
✦【TPPは参加するまで情報アクセスは遮断されており、参加して「一切情報は漏らしません」という秘密保持誓約書にサインして初めて情報に接触できる。にもかかわらず、あっという間に情報格差を埋めて同列に立ち位置を取り、会議をリードし始めました】・・・
自画自賛の最たるもので、“一切情報は漏らしません!”の条件付の交渉などは胡散臭い。後ろめたい心情が言わせたものと筆者は推測しています。
✦【10月のバリでのAPEC首脳会議の際、TPP首脳会議で大筋合意し、年内妥結というスケジュールを各国で共有している】・・・
他国はどうであれ、日本国は余りのも拙速過ぎる。
✦【国家戦略特区も加速させます。今までの特区は地域振興ですが、国際戦略特区は日本の牽引特区です。まずは総合特区「メディコンバレー」。医薬品・医療機器を世界の3本の指にしようとしているわけです。NIH(米国立衛生研究所)のように薬の基礎研究から創薬まで一手にやる日本版「NIH」も創設します】・・・
またしても和製英語、カタカナ語で舌を噛みそうな「メディコンバレー」の言葉を使って粋がり国民を煙に巻く(風船を上げる)とは、米国の「シリコンバレー」をもじっては悦に入っている様は見苦しい!。
何れにしても「メディコンバレー」は余りにも抽象的過ぎて評価の仕様がありません!。
安倍首相の取り巻きは仰々しい国際戦略特区などの「~特区」の言葉を好んでつかう、・・・そのうち日本列島は特区が乱立して、規制の緩みで外国人租界となり、日本の特質が失われるは火を見るより明らかです。まぁ!~、竹中平蔵がブレーンとして向かい入れられた事で予想はできましたが。
TPPもFATTの最大の問題点は!・・・『国際法/国内法の区別つかず』で悪用されれば主権問題に発展し国の将来が左右されて仕舞う事です。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などは!・・・内実は米国への隷属色の強い2国間のFTA(Free Trade Agreements ⇔2国間自由貿易協定)であり、日本側にとっては米国のごり押しを飲まざるを得ないものである。
TPPはそれ程までに日本国にとっては必要なものだろうか?・・・
何故に日本国は安部政権はこれ程に前のめりになっているのか?・・・
財界の圧力には屈せざる得ない風潮が自民党内に渦巻いているのか?・・・
TPPは支那を封じ込める為に、環太平洋の安全保障にとっては絶対に必要と考えている者が多いのか?・・・
筆者の老化現象が進んでいる脳細胞では分析は困難です。
参考記事