マクドナルドは声明の中で「管理職の30%を少数者から採用し、男女間の賃金の格差解消も実現した」と述べ、目標廃止の理由に多様性確保をある程度達成したことを挙げた。
ただ、保守活動家ロビー・スターバック氏は同日、自身のX(旧ツイッター)で数日前にマクドナルドにDEI施策の変更を求めたと明かしている。
米国ではDEIの推進が『逆差別的』として、企業が一部の投資家や活動家から圧力を受けている。米小売り最大手ウォルマートは人種公平性に関する従業員の研修をやめ、多様性プログラムを推進する取引先への優遇措置を撤廃した。 米フォード・モーターもDEIを評価する外部の企業調査への参加をやめることを表明した。
DEIを含むESG(環境・社会・企業統治)指標は近年、企業の役員報酬制度に採用されてきた。ところが2024年以降、トランプ次期米大統領を支持する運用会社の圧力もあり、役員報酬制度からDEI指標を外す動きが相次いだ。
24年12月中旬には、米証券取引所のナスダックが同市場に上場する企業に女性やマイノリティー(少数派)の取締役選任を求めるルールについて、米連邦巡回区控訴裁判所は無効と判断した。
米国で活動する日本企業にとっても無縁ではない。
日産は米国でDEIに基づく活動方針の一部を見直した。政治活動に重点を置く団体の調査に参加することなどを取りやめる。性的少数者団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)」が実施する性的少数者への取り組みを評価する「企業平等指数」への参加をやめるほか、人種公平性を重視したイベントへの資金提供も見送る。
今後はこうした活動について、従業員のキャリアアップ支援や能力開発など人材育成を目標の中心に据えるとした。
トヨタ自動車もHRCが実施する「企業平等指数」への参加をやめた。24年から、DEIに基づく行動基準について、従業員のSTEM(科学・技術・工学・数学)教育など人材育成を重視したものに変えたという。トヨタ米国法人は「多様性に根ざした活動そのものをやめるわけではない」と強調する。
両社もスターバック氏などから、LGBTの取り組みを評価する活動などを自粛・廃止すべきだとの批判を受けていた。同氏はXなどで「企業の価値観は多くのトヨタやレクサス所有者の価値観を反映していない」といった意見を表明していた。
今後、米国で活動するほかの日本企業もこうした保守層の圧力に直面する可能性がある。
ナスダック上場のくら寿司USAは「ナスダックのルールに対する裁判所の判断に関係なく、今後も多様性を尊重し、人種や性別に関係なく公平に登用・昇格させる」との立場だ。ダイバーシティー経営を掲げる三井物産はDEI方針について「現時点では変更しない」としている。
30年度に世界で執行役・理事以上の役職者に占める外国人と女性比率3割目標を掲げる日立製作所は方針を変えない考えだ。
保守層の反発はある一方、多様性の推進は世界で重要なテーマであることには変わりない。サステナブルファイナンスに詳しい大和総研の中澪研究員は「企業には様々なステークホルダーがおり、離職率の上昇やESG機関投資家からの投資除外などDEIをやめることのリスクは大きい」と話す。
もともと、日本企業では米企業のように性的少数者や人種など様々なマイノリティー(少数派)を包摂した制度を持つ企業は少ない。DEIに取り組む日本企業は急速に増えているものの、大半が女性関連で指標を設ける程度にとどまっていた。
PwC Japanの藤沢可南子・地政学リスクアドバイザリーマネージャーは「米国に加え、欧州でも企業のDEI経営の難易度は上昇する」と予想する。保守層からの圧力を直接受けるだけでなく、実務上の影響も出てくるとみる。
例えば、移民やマイノリティーの排除といった政策がとられれば、企業は労働力の確保が難しくなったり、ビザの発給が遅れたりすることも考えられるという。その上で藤沢氏は「世論の移り変わりがある中でも、必要なDEI対応を粛々と進める冷静さを保つことが重要だ」と訴える。
(ラスベガス=川上梓、長谷川雄大)
これは確信的にトランプさん効果!・・・
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