5年で東京ドーム781個分】:
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【この記事のポイント】
・耕作されず放置された「荒廃農地」再生の取り組みが広がっている
・再生面積1位の茨城県は費用を補助、農地の貸主にも協力金
・鹿児島県は和牛放牧に活用、大学と省人化のための実験も開始
耕作されずに放置され、作物の栽培ができなくなった「荒廃農地」を再生させる取り組みが各地で加速してきた。
高齢化や担い手不足を背景に全国で耕地面積の減少が続くが、茨城県は需要が増すサツマイモ畑への転用を促すことなどで過去5年間に東京ドーム781個分の荒廃農地を再生した。
農林水産省によると、荒廃農地は2020年時点で耕地面積の6%にあたる28.1万ヘクタールある。放置後、時間がたてばたつほど復元利用は難しくなり、うち7割弱が再生困難な状態になっている。中山間地域にあり多くが水田や果樹園などに利用されてきた。放置された農地を早い段階に再生し収益性を高めることが、地域の再生に不可欠となる。
都道府県ごとの荒廃農地の再生面積を集計したところ、16~20年で最も多かったのは茨城県で3652ヘクタールだった。鹿児島県が2997ヘクタール、長野県が2852ヘクタールと続いた。
茨城県は19年から「茨城かんしょトップランナー産地拡大事業」として、荒廃農地をサツマイモ畑に転用する生産者らに補助金を支給する。10アールあたり10万円を上限に再生費用の半分を補助するだけでなく、農地の貸主にも協力金を支給する。制度を活用した栽培面積は22年3月時点で129ヘクタールに達した。
サツマイモは国内の焼き芋ブームや東南アジアへの輸出増を背景に需要が伸びており、年平均価格は10年前と比べて3割高い水準にある。干し芋や焼き芋などに加工しやすいため、付加価値を高めて収益を上げやすい。「生産意欲が高まる一方で鉾田市など昔からの産地には土地供給余力が乏しく、必然的に荒廃農地への引き合いの強さにつながっている」(県農林水産部産地振興課)
建設業のユタカファーム(水戸市)も県の事業を活用し、水稲を栽培する陸田を転用して参入した。栽培だけでなく干し芋生産も手がけており、本格的な作付け開始から2年で500万円の利益が出るようになった。石井登社長は「機械化や作付け品目を工夫すれば、農業は収益をあげられる産業になる」と話す。
畜産業が盛んな鹿児島県では荒廃農地を放牧に活用する。農業法人さかうえ(鹿児島県志布志市)は、かつて野菜や茶を生産していた耕作放棄地で19年から黒毛和牛を育てている。農家から土地を借り受け、中山間地に点在する計約15ヘクタールで130頭ほどを放す。「里山牛(さとやまぎゅう)」のブランド名でインターネットを通じ全国販売する。22年7月からの1年で出荷を100頭ほどに拡大し、単年度での黒字転換を見込む。省人化を進めるため、20年度から鹿児島大学や慶応義塾大学などと人工衛星を使った実験を始めた。牛の運動量や行動履歴などのデータを集めて健康状態を把握する。
放牧により土地は耕され、草を食べた牛のフンは有機肥料として土にかえる。放牧した土地は将来的に野菜や飼料作物の農地として活用する。
再生面積が全国4位の福島県では、荒廃農地の発生を未然に防ぐ取り組みも進む。農業法人の高ライスセンター(福島県南相馬市)は担い手がいなくなった土地を請け負い、コメや小麦、大豆を生産する。耕作面積は17年から120ヘクタール広がった。
現在は6人で約180ヘクタールを耕作し、乾いた田んぼに種もみを直接まく手法を取り入れている。育苗などの手間がかからないため労働時間は田植えをする場合に比べて3分の1ほどに減り、収量も同じ水準を確保できている。作業効率を高めることが担い手不足の緩和につながっていく。
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